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社会・暮らし

【守山市】ダチョウじゃなくてエミューだった!何が起きた?ダチョウとの違い、危険性、出会ったときの対処法、飼育のルール


2026年9月23日の早朝、滋賀県守山市で「ダチョウが歩いている」という110番通報があり、警察が出動しました。約2時間後に捕獲された鳥は、ダチョウではなくエミューでした。けが人が出たという報道はありません。

この記事では、出来事の流れと、エミューとダチョウの違い、エミューの危険性と出会ったときの対処法、そして移動動物園の仕組みや飼い主の責任を、報道と法律・行政の公表資料をもとに整理します。

要点

  • 9月23日午前6時45分ごろ、守山市の住宅街で大きな鳥が目撃され、パトカーでも追いつけないまま、約2時間後に集合住宅の敷地で捕獲された。捕獲後、ダチョウではなくエミューと分かった。
  • エミューはオーストラリア原産で、ダチョウ(アフリカ原産)より一回り小さい。足の指の数(エミューは3本、ダチョウは2本)で見分けられる。
  • 基本的には人に温厚だが、驚くと走り回り、時速50キロ前後で走ることもある。出会ったら近づかず、追いかけず、110番する。
  • エミューは移動動物園の経営者の自宅で飼われていた。動物を見せる仕事には「第一種動物取扱業」の登録が必要で、飼い主には逃走を防ぐ努力義務がある。

守山市で何があった? 時系列で整理

午前6時45分ごろ、吉身1丁目の交差点付近で110番

騒ぎの始まりは、2026年9月23日(秋分の日)の午前6時45分ごろでした。MBSニュースによると、守山市吉身1丁目の交差点付近で「ダチョウが徘徊している」と警察に通報がありました。付近では、ほかにも複数の目撃情報が寄せられたといいます。

目撃された鳥の体長は約2メートルと伝えられています。祝日の早朝とはいえ、人や車の往来がある大通り沿いでの出来事でした。

警察がパトカーで追うも逃げられ、JR守山駅方面へ

通報を受けて駆けつけた警察官が、午前7時ごろに鳥の姿を確認しました。関西テレビの報道によると、警察官はパトカーで追いかけましたが、足が速く逃げられてしまったといいます。MBSニュースは、鳥がJR守山駅の方向へ去っていったと伝えています。

約2時間後、集合住宅の敷地で捕獲

最初の通報から約2時間後の午前8時40分ごろ、鳥は近くの集合住宅の敷地で見つかりました。MBSニュースによると、警察官が取り囲む中、飼育員が捕獲したとのことです。

早朝の住宅街を大型の鳥が走り回るという異例の事態でしたが、確認できた報道の範囲では、けが人が出たという情報は見当たりません。

捕獲後に「実はエミューだった」と判明

捕獲後、状況が大きく変わります。MBSニュースは、逃げていたのはダチョウではなく「エミュー」で、移動動物園の経営者の自宅から逃げ出したと報じました。

MBSによると、このエミューはアメリカダチョウとともに玄関先の庭で放し飼いにされており、扉は施錠していたとのことです。園の関係者は「これまでこのようなことはなかったので、驚いている」と話しています。施錠していたにもかかわらずどのように外へ出たのかについては、現時点で報じられていません。

エミューとダチョウ、何が違う?

ここからが本題です。見間違えられたエミューとダチョウは、実際にはどれほど違う鳥なのでしょうか。主な違いを表にまとめると、次のようになります。

項目 エミュー ダチョウ
原産地 オーストラリア アフリカ
大きさ 全長1.5〜2m、体重45〜60kg 体高2.3m超、体重135kg超(オス成鳥)
足の指 3本 2本
走る速さ 時速50km程度 平均時速50km、最大時速80km
性格 人に対しては温厚 人を恐れない。キックは強烈
卵 アボカドのような深緑色 白っぽい色、長径約11cm

原産地|エミューはオーストラリア、ダチョウはアフリカ

最も根本的な違いは、住んでいる大陸です。エミューはオーストラリア大陸全域の草原や砂地などの開けた土地に分布しており、オーストラリアの非公式な国鳥とされています。オーストラリアの国章にも、カンガルーと並んで盾を支える姿で描かれている、国を象徴する鳥です。

一方、ダチョウはアフリカに暮らす鳥です。

つまり両者は、見た目こそ似ていますが、まったく別の大陸で暮らしてきた鳥です。「ダチョウの一種がエミュー」というわけではありません。

大きさ|エミューは全長1.5〜2m、ダチョウはさらに大きい

大きさにも明確な差があります。エミューは全長1.5〜2メートル、体重は45〜60キログラムほどで、那須サファリパークの解説によると、鳥の中ではダチョウの次に大きい鳥です。

ダチョウはさらに大型で、オスの成鳥は体高230センチメートル、体重135キログラムを超え、現生する鳥類では最大種です。体重で比べると、ダチョウはエミューの2倍以上あります。

ただし、単独で見た場合、2メートル前後の大型の鳥という点では共通しているため、比較対象がないと大きさだけで区別するのは難しいでしょう。

見分け方は「足の指」と「首」

実際に見分けるときに分かりやすいのが、足の指の数です。ダチョウの足の指は、大きな鉤爪がついた中指と外指の2本しかありません。一方、エミューの足の指は3本あります。足元をよく見ることができれば、判別の手がかりになります。

もう一つのポイントが首です。ダチョウは長い首が小さな羽毛に覆われていて、首がすらりと細く見えます。一方、エミューは首元まで毛足の長い茶色っぽい羽毛に覆われ、全体にぼさぼさとした印象を与えます。

羽毛そのものにも違いがあります。那須サファリパークの解説によると、エミューの羽は1本の根元から2本の羽が生えているという独特の構造をしています。

性格|エミューは人に温厚、ダチョウはキックが強烈

性格にも違いがあります。エミューは人に対しては温厚とされています。ただし、雷や金属音、子どもの甲高い声などに反応して走り回ることがあり、犬などの動物には警戒心が強く、蹴りで攻撃することもあります。オスのほうが比較的おとなしいとされています。

ダチョウは人を恐れない性質を持ち、その脚力は強烈です。キックの力は100平方センチメートルあたり4.8トンの圧力があるといわれ、鋭い爪から繰り出すキックで外敵を殺すこともできるとされています。

とはいえ、驚いてパニックになった大型の鳥は、どちらであっても危険です。万が一見かけた場合は、近づかず、追いかけず、すぐに110番するのが正しい対応です。

卵|エミューは深緑色、ダチョウは白っぽい

意外な違いが卵の色です。エミューの卵はアボカドのような深緑色で、長さは10センチメートル程度、重さは約550〜600グラムです。

ダチョウの卵は白っぽい色で、長径は約11センチメートルあります。その卵黄は、現在確認されている世界最大の細胞とされています。

見た目が似ている2種類の鳥が、卵ではまったく異なる色をしているというのは面白いところです。

一緒に飼われていた「アメリカダチョウ」って何?

正体は南米の「レア」。ダチョウとは別の鳥

MBSニュースの報道によると、脱走したエミューは「アメリカダチョウ」と一緒に飼われていました。この名前を聞いて「アメリカにもダチョウがいるの?」と思った方もいるかもしれません。

アメリカダチョウは、南米に生息する「レア」という鳥の別名です。ここでいう「アメリカ」はアメリカ合衆国ではなく、南北アメリカ大陸を指しています。レアはアルゼンチン北東部・東部、ウルグアイ、パラグアイ、ブラジル、ボリビアなどに分布しています。

名前に「ダチョウ」とついていますが、ダチョウとは別の鳥です。大きさは頭高1.2〜1.5メートル、体重20〜25キログラムほどで、ダチョウやエミューよりひと回り小さく、足の指はエミューと同じ3本です。

つまり今回の飼い主のもとでは、オーストラリア原産のエミューと、南米原産のレアという、異なる大陸の飛べない鳥が一緒に飼われていたことになります。

「ダチョウ」の仲間とされる鳥たち|ダチョウ・エミュー・レア・ヒクイドリ・キーウィ

ダチョウ、エミュー、レアはいずれも、空を飛べない代わりに、地上を走ることに適応した鳥です。こうした鳥たちは「走鳥類」と呼ばれ、ほかにもヒクイドリやキーウィが含まれます。主な走鳥類を並べると、次のとおりです。

名前 生息地 大きさの目安 足の指
ダチョウ アフリカ 体高2.3m超 2本
エミュー オーストラリア 全長1.5〜2m 3本
レア(アメリカダチョウ) 南米 頭高1.2〜1.5m 3本
ヒクイドリ オーストラリア北東部・ニューギニア 大型 3本
キーウィ ニュージーランド ニワトリ程度 ―

※キーウィの足の指の数は、資料によって記載が異なるため省略しています。

興味深いのは、これらの鳥がアフリカ、オーストラリア、南米、ニュージーランドと、南半球の各地にばらばらに分布していることです。

中でもキーウィは、ほかの走鳥類とは大きく異なり、ニワトリほどの小さな体で、夜行性という特徴を持っています。同じ飛べない鳥でも、その姿や暮らしぶりは実に多様です。

世界で一番危険な鳥とされるヒクイドリとの違い

走鳥類の中で特に注意が必要なのが、ヒクイドリです。「世界で最も危険な鳥」とも呼ばれ、その理由は脚にあります。ヒクイドリの足の先には10センチほどの長さの爪があり、最大時速約50キロで走り、約2メートルの高さまで跳躍できるとされています。

実際に死亡事故も起きています。2019年4月12日、米フロリダ州北部ゲインズビルで、自宅でヒクイドリを飼育していた75歳の男性が襲われて死亡しました。男性が転倒したところへ鳥が襲いかかったとみられ、当局は事故と判断しています。

日本では、こうした危険性から、ヒクイドリ科の鳥は動物愛護管理法に基づく「特定動物」に指定されています。特定動物は2020年6月1日から愛玩目的での飼養が禁止されており、動物園などが飼養する場合も都道府県知事などの許可が必要です。一方、ダチョウは特定動物のリストに含まれていません。

エミューについては、国内の牧場などでの飼育例が多数あり、実務上は特定動物として扱われていないと考えられます。ただし、特定動物のリストでは「ヒクイドリ科」が科ごと指定されており、分類の考え方によってはエミューを同じ科に含めることもあります。エミューの飼育を検討する場合は、事前に都道府県の動物愛護担当窓口に確認することをおすすめします。

エミューはどれくらい速い?

警察のパトカーでも追いつけなかった

関西テレビの報道によると、通報を受けて駆けつけた警察官はパトカーで追いかけましたが、ダチョウ(実際にはエミュー)の足が速く、逃げられてしまったといいます。

もっとも、これは単純に「エミューが車より速い」という意味ではありません。住宅街の道路では、車は歩行者や交差点に配慮しながら走行しなければならず、スピードを出すことはできません。一方、エミューは車が入れない路地や敷地内にも自由に入り込めます。狭い道や曲がり角の多い住宅街では、車で大型の鳥を追いかけるのは現実的に難しいということです。

エミューとダチョウの最高速度を比較

では、実際にどれくらいの速さで走るのでしょうか。走る速さは資料によって幅があるため、出典ごとに整理します。

  • エミュー:那須サファリパークの動物図鑑では「時速50kmぐらいで走ることができる」とされています。
  • ダチョウ:日本語版ウィキペディアでは「平均時速50km、最大時速80km」とされ、歩幅は2.2〜2.8メートルに達するとされています。
  • ヒクイドリ:CNNの報道では「最大時速約50キロ」で走行可能とされています。

時速50キロといえば、一般道の法定速度とほぼ同じです。人間が走って追いつくことは、まず不可能です。

ダチョウはさらに速く、最大時速80キロに達するとされます。見た目がよく似た鳥でも、走る能力には差があるということです。ただし、これらの数値はあくまで最高速度の目安であり、ずっとその速さで走り続けられるわけではありません。

住宅街で車と接触したら何が起きるか

住宅街を大型の鳥が走り回るとき、最も現実的な危険は交通事故です。

エミューの体重は45〜60キログラムほどあります。これは成人の体重に近く、車と衝突すれば車体の損傷は避けられません。それ以上に怖いのが、突然飛び出してきた動物を避けようとした運転者の急ハンドルや急ブレーキによる二次事故です。対向車線へのはみ出しや、歩行者・自転車との接触、後続車の追突につながるおそれがあります。

また、エミュー自身にとっても車との接触は命に関わります。今回の守山市のケースでも、大通り沿いの交差点付近という、車の往来がある場所で目撃されていました。人にも鳥にも被害が出なかったのは、幸運だったと言えます。

エミューは人を襲う? 危険性を正しく知る

基本的には人に対して温厚

エミューは、基本的には温厚な性格の鳥とされています。日本語版ウィキペディアでは、人に対しては温厚で、オスのほうが比較的おとなしいと説明されています。

国内でも、北海道網走市の東京農業大学生物産業学部が飼育・研究を行っているほか、熊本県菊池市の観光牧場、佐賀県基山町などでも飼育されています。京都府立大学のキャンパスでは、エミューが毎日散歩する光景が話題になったこともあります。人と近い距離で飼育されている例が多いのは、この温厚な性格によるところが大きいでしょう。

ただし「温厚」というのは、あくまで落ち着いた状態での話です。

ただし驚くと走り回り、犬などには蹴りで攻撃することも

エミューには注意すべき一面もあります。犬などに対しては警戒心が強く、蹴りで攻撃することがあるとされています。

時速50キロで走れるほどの脚から繰り出される蹴りは、犬にとっても人にとっても大きなけがにつながりかねません。特に散歩中の犬が吠えかかったり追いかけたりすれば、エミューが身を守るために反撃する可能性があります。

また、驚いたときのエミューは、周囲を気にせず激しく走り回ることがあります。後述する愛媛県立とべ動物園の事例でも、エミューは「何かに驚いたことで柵に激突」し、その破損部分から脱走しています。パニック状態の大型の鳥に近づけば、意図せずぶつかられたり、蹴られたりする危険があります。

雷・金属音・子どもの甲高い声に反応しやすい

エミューが反応しやすい刺激として、雷、金属音、子どもの甲高い声などが挙げられています。これらに驚いて走り回ることがあるとされています。

このことは、住宅街でエミューに遭遇した場合に重要な意味を持ちます。子どもが興奮して声を上げたり、誰かが大きな物音を立てたりすることで、エミューがパニックを起こす可能性があるためです。車のクラクションやシャッターの開閉音なども刺激になりえます。

逆に言えば、静かに距離を取ることが、エミューを落ち着かせる最善の方法だと言えます。

もし逃げたエミューやダチョウに出会ったら

ここからは、万が一逃げ出した大型の鳥に遭遇したときの行動の目安をまとめます。公的機関がエミューに特化した対処法を示しているわけではありませんが、前述の性質を踏まえると、次のような行動が基本になります。

近づかない、追いかけない、大声を出さない

最も大切なのは、近づかないことです。写真や動画を撮りたくなる気持ちは分かりますが、スマートフォンを構えて近寄るのは避けてください。エミューは驚くと予測できない動きをするため、数メートルの距離でも安全とは言い切れません。

追いかけるのも厳禁です。追われていると感じた動物はさらにパニックになり、車道に飛び出したり、人のいる方向へ走り出したりするおそれがあります。自分で捕まえようとするのは、危険なうえに動物にとっても大きな負担になります。

大声を出さないことも重要です。前述のとおり、エミューは甲高い声や大きな物音に反応しやすいとされています。見つけたら静かにその場を離れ、建物の中や車の中など、安全な場所に移動してください。

子どもや犬を遠ざける

子どもや犬を連れている場合は、特に注意が必要です。

子どもは珍しい動物を見ると興奮して近づこうとしたり、声を上げたりしがちです。すぐに手をつないで、エミューから離れる方向へ移動してください。子どもの甲高い声はエミューを刺激する要因になりうるため、落ち着かせることも大切です。

犬を連れている場合は、リードを短く持って犬を制御し、エミューから遠ざけてください。エミューは犬に対して警戒心が強く、蹴りで攻撃することがあるとされています。犬が吠えたり飛びかかろうとしたりすれば、双方がけがをする危険があります。犬を抱き上げられるなら、抱えてその場を離れるのが確実です。

すぐに110番し、居場所を伝える

安全な場所に移動したら、すぐに110番通報してください。今回の守山市のケースでも、付近では複数の目撃情報が警察に寄せられていました。

通報の際は、目撃した場所、時刻、動物の特徴、進んでいった方向をできるだけ具体的に伝えてください。「◯◯交差点付近で、◯◯方面に向かって走っていった」といった情報は、捜索の手がかりになります。

安全な場所から動物の居場所を見守り、警察が到着したら状況を説明できるようにしておくとよいでしょう。ただし、そのために近づいたり追いかけたりする必要はありません。

車の運転中に遭遇した場合

運転中に大型の鳥が道路に現れた場合は、まず落ち着いて減速してください。急ハンドルや急ブレーキは、後続車の追突や対向車との衝突といった二次事故の原因になります。

鳥が道路上にいる場合は、安全な場所に停車し、鳥が離れるのを待つのが基本です。クラクションを鳴らすと、驚いた鳥がかえって車の方向へ走ってくる可能性があるため、避けたほうが無難です。

安全に停車できたら、110番通報してください。車内にいれば安全が確保されているため、窓を閉めたまま、動物の様子と進行方向を観察して伝えることができます。

過去のエミュー脱走の事例

今回の守山市の件は、エミューの脱走としては決して珍しいものではありません。国内でも、動物園や牧場から逃げ出した例が過去に複数報じられています。

2024年5月、愛媛県立とべ動物園で脱走。捕獲後に死亡

2024年5月17日の12時45分ごろ、愛媛県立とべ動物園でエミューが脱走しました。同園の公式発表によると、エミュー舎で飼育されていたオスのエミュー「ナリ」(14歳)が、何かに驚いたことで柵に激突し、一部破損した部分から園内に脱走したとのことです。

担当の飼育員がすぐに異変に気づいて現場へ向かい、5分後にはエミュー舎から約20メートル離れたラクダ舎の前で捕獲・収容されました。来園者にけがはありませんでしたが、ナリはショックによる循環器障害で死亡しています。

脱走から捕獲まではわずか5分、移動距離も約20メートルと、短時間・短距離の出来事でした。それでも命を落としてしまったという事実は、エミューにとって脱走と捕獲がどれほど大きな負担になるかを示しています。

高知県香南市ののいち動物公園でも脱走、捕獲後に死亡

高知県香南市の高知県立のいち動物公園でも、同様の事例が起きています。同園の公式発表(2023年10月21日)によると、10月20日の午前9時30分ごろ、メスのエミュー「ボンボン」が脱出する事故が起きました。展示場に放した直後、園路に出ているところを職員が発見したといいます。

職員は体を保定した状態で獣舎まで移動させましたが、その後に死亡が確認されました。死因はショック死と発表されています。同園は、死亡に至った経緯の徹底的な調査と、脱出防止対策の見直しを表明しています。

こちらも、園路に出ていたところを職員がすぐに発見しており、長時間逃げ回っていたわけではありません。それでも、捕獲して運ぶまでの過程で命を落としています。

熊本では観光牧場から20羽以上が集団脱走した例も

大規模な脱走としては、熊本県菊池市の観光牧場の事例があります。2021年10月7日の朝、牧場で飼育されていたエミューが集団で逃げ出しました。熊本日日新聞や日本経済新聞(共同通信)は約20羽、西日本新聞は20羽以上と伝えています。

西日本新聞によると、牧場では54羽を飼育しており、発情期で柵の中を走り回ることがある時期だったといいます。エミューが体当たりをした拍子に柵が開いてしまったとのことです。市職員や消防団などが捜索にあたり、ロープなどを使って次々に捕獲しましたが、1羽が死に、初日の捜索を終えた時点で5羽が見つかっていませんでした。熊本日日新聞は、その後に最後の3羽を捕獲したことを報じています。市は「見つけても近づいたり食べ物を与えたりしないで」と呼びかけていました。

この事例は、エミューの飼育が決して特殊なものではなく、観光や産業の目的で国内でも一定規模で行われていることを示しています。同時に、多数を飼育する場合の脱走対策の難しさも浮き彫りにしました。

なぜ捕獲後に死んでしまうことがあるのか|捕獲時のストレス

とべ動物園とのいち動物公園の事例は、いずれも捕獲後に「ショック」による死亡とされています。なぜ、短時間の脱走で命を落としてしまうのでしょうか。

野生動物の分野では、追跡や捕獲、体の保定、輸送といった過程での極度のストレスや過度の運動が、動物の体に深刻な影響を与えることが知られています。代表的なものが「捕獲性筋疾患(キャプチャー・ミオパチー)」と呼ばれる症状で、哺乳類の捕獲作業に関する総説論文なども発表されています。筋肉の損傷や循環器への負担が生じ、場合によっては死に至ることがあるとされています。

エミューのように警戒心が強く、驚くとパニックになりやすい動物は、こうしたストレスの影響を受けやすいと考えられます。見慣れない場所に出てしまった緊張、人に追われる恐怖、体を押さえつけられる負担。これらが重なることで、短時間であっても体に大きな負荷がかかります。

ただし、とべ動物園とのいち動物公園の個体の死因が捕獲性筋疾患だったと発表されているわけではありません。両園の発表は「ショックによる循環器障害」「ショック死」です。ここでは、捕獲の過程が動物に大きなストレスを与えうるという一般論として理解してください。

この点は、一般の人が逃げた動物を見かけたときの行動にも関わります。善意で追いかけたり捕まえようとしたりすることが、動物をさらに追い詰めてしまう可能性があるということです。見つけたら追わずに通報し、専門家に任せる。それが動物の命を守ることにもつながります。

守山市のエミューは誰が飼っていた?

移動動物園の経営者の自宅で、玄関先の庭に放し飼い

まず、今回逃げ出したエミューの飼い主について整理しておきます。MBSニュースの報道によると、エミューは移動動物園の経営者の自宅から逃げ出したもので、玄関先の庭で放し飼いにされていたといいます。

報道各社の伝え方には違いがありました。関西テレビは「近くの移動動物園」、ABCニュースは「近くの動物園」から逃げ出したと伝え、読売テレビは飼い主の女性が自宅で飼っていたと報じています(いずれも9月23日に確認した時点の内容)。移動動物園を営む人の自宅の庭で飼われていたと考えれば、これらはいずれも同じ事実の別の側面を伝えたものとして整合します。

なお、この記事では飼い主や移動動物園の名称、所在地は記載しません。報道各社も「移動動物園」「飼い主の女性」といった表現にとどめています。

アメリカダチョウ(レア)と一緒に飼育、扉は施錠していた

MBSニュースによると、今回脱走したエミューは、アメリカダチョウとともに飼育されていました。

移動動物園側は、扉は施錠していたと説明しています。どのような経路で外へ出たのかは、報じられていません。

園の関係者「これまでこのようなことはなかったので、驚いている」

移動動物園の関係者は、MBSの取材に対し「これまでこのようなことはなかったので、驚いている」と話しています。

また、飼い主の女性は読売テレビの取材に「生まれて間もない『エミュー』を飼っていたが、警察から連絡があり確認したところ、いなくなっていた」と答えています。一方、各社の報道は逃げていた鳥の大きさを「体長約2メートル」と伝えており、エミューの成鳥が全長1.5〜2メートルほどであることを踏まえると、この二つの情報はそのままでは整合しません。「体長約2メートル」は、捕獲前に遠目で見た印象だった可能性もあります。

そもそも「移動動物園」って何?

幼稚園やイベントに動物を連れて行く出張型の動物園

移動動物園とは、常設の施設に来場者を招くのではなく、動物を連れて幼稚園や保育園、学校、商業施設、地域のイベント会場などに出向き、その場で動物とのふれあいの機会を提供する形態の事業です。

ウサギやヤギのような比較的扱いやすい動物のほか、事業者によっては今回のように大型の鳥を扱うこともあります。子どもたちが普段触れられない動物に間近で接することができるのが特徴です。

移動動物園を営むには登録が必要|第一種動物取扱業とは

移動動物園は、誰でも自由に始められるわけではありません。動物愛護管理法に基づき、「第一種動物取扱業」としての登録が必要です。

環境省によると、第一種動物取扱業とは、営利を目的として業として動物を取り扱う事業のことで、次の7つの業種に分かれています。

  • 販売:小売・卸売、繁殖、輸出入など
  • 保管:ペットホテル、預かりを伴う美容業など
  • 貸出し:レンタル、映画出演用の動物の貸し出しなど
  • 訓練:調教、出張訓練など
  • 展示:動物を見せる業(動物とのふれあいの提供を含む)
  • 競りあっせん:動物オークションなど
  • 譲受飼養:老犬老猫ホームなど

移動動物園は、このうち「展示」に該当します。環境省は展示の例として、動物園、水族館、移動動物園、動物サーカス、動物ふれあいパーク、乗馬施設、アニマルセラピー業者を挙げています。

登録は、事業所・業種ごとに、都道府県知事または政令指定都市の長から受ける必要があります。また、事業所ごとに「動物取扱責任者」を置く必要があり、これは業務を適正に営むために十分な技術的能力と専門的な知識経験を有する、専属の常勤職員でなければなりません。環境省によると、登録せずに営業した場合や、改善命令・業務停止命令に従わなかった場合は、100万円以下の罰金が科されます。

注目したいのは、環境省が「動物の所有や飼養施設がない場合も、規制の対象」と明記している点です。つまり、自前の立派な施設がなくても、業として動物を見せる事業を営む以上は登録が必要になります。

普段、動物たちはどこで暮らしているのか

出張型の事業である移動動物園では、動物たちが普段どこで暮らしているかは事業者によってさまざまです。今回の守山市のケースでも、エミューは玄関先の庭で飼われていたと報じられています。

環境省によると、第一種動物取扱業者には、動物の管理の方法や飼養施設の規模・構造などの基準を守ることが義務づけられています。動物を展示・移動させる事業である以上、普段の飼育環境だけでなく、移動時の輸送や、出張先での管理も含めて適切な体制が求められます。

住宅地の中にある個人宅の庭で大型の動物を飼う場合、周辺には住宅や道路があり、万が一逃げ出したときに人や車と接触するリスクが高くなります。動物にとっての快適さと、周囲の安全の両方を確保することが、住宅地で動物を扱う事業者には求められていると言えます。

エミューやダチョウは個人で飼えるのか

2020年の法改正で「危険な動物」のペット飼育は禁止に

大型の動物を個人で飼えるかどうかを考えるうえで、まず押さえておきたいのが「特定動物」という制度です。

特定動物とは、人に危害を加えるおそれのある危険な動物として、動物愛護管理法に基づいて指定されている動物です。環境省によると、トラ、クマ、ワニ、マムシなど、哺乳類、鳥類、爬虫類の約650種が対象となっています。

2020年6月1日の改正法施行により、特定動物とその交雑種は、愛玩目的で飼養することが禁止されました。つまり、ペットとして飼うことはできなくなったということです。動物園や研究機関などが特定動物を飼養する場合も、都道府県知事などの許可が必要です。環境省によると、無許可で飼養した場合などの罰則は、個人で6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、法人の場合は5,000万円以下の罰金とされています。

環境省の特定動物リストでは、鳥類として「ひくいどり科全種」のほか、コンドルやワシ・タカの仲間の一部が挙げられています。ヒクイドリは「世界で最も危険な鳥」とも呼ばれ、2019年には米フロリダ州で飼い主の男性が襲われて死亡する事故も起きています。

ダチョウは特定動物に該当しない

では、ダチョウはどうでしょうか。環境省の特定動物リストを確認すると、ダチョウは含まれていません。したがって、ダチョウは特定動物としての許可を得なくても飼育できる動物ということになります。

実際に国内では、ダチョウ牧場や観光施設でダチョウが飼われており、食肉や卵、羽根などを活用する産業としても一定の広がりがあります。ただし、特定動物に該当しないからといって、誰でも簡単に飼えるわけではありません。ダチョウはオスの成鳥で体高2.3メートル、体重135キログラムを超える現生最大の鳥で、そのキックは外敵を殺すこともできるほどの威力があるとされています。飼育には相応の施設と知識が不可欠です。

エミューの扱いと、確認が必要な理由

ここが、この記事で最も慎重に扱いたい論点です。結論から言うと、エミューを個人で飼うことは実務上可能と考えられますが、法令の文言だけで明確に判断できるわけではありません。

まず、実態を見てみます。国内では、北海道網走市の東京農業大学生物産業学部がエミューの飼育・研究を行っているほか、熊本県菊池市の観光牧場、佐賀県基山町などで飼育されています。こうした状況から、エミューは実務上、特定動物として扱われていないと考えられます。

一方で、確認が必要な理由もあります。環境省の特定動物リストでは、鳥類について「だちょう目ひくいどり科全種」が指定されています。ところが、エミューの分類には複数の考え方があります。エミューだけで独立した「エミュー科」とする分類がある一方で、日本語版ウィキペディアのように、エミュー属を「ヒクイドリ科」に含める分類もあるのです。

つまり、リストの「ヒクイドリ科」という文言だけを見ると、どちらの分類体系を採るかによって、エミューが含まれるのかどうかの読み方が変わりうるということです。環境省の特定動物リストや関連ページを確認した範囲では、エミューを含めるか否かを明示した記述は見当たりませんでした。

このため、エミューの飼育を検討している方は、事前にお住まいの都道府県の動物愛護担当窓口(動物愛護センターなど)に確認することを強くおすすめします。「実際に飼っている人がいるから大丈夫」と自己判断するのではなく、公的機関に直接確認しておくことで、後からトラブルになるリスクを避けられます。

なお、今回の守山市のエミューの飼育が法令上問題があったかどうかについて、この記事で判断するものではありません。そうした点が問題になっているという報道もありません。

実際に国内で飼われている例|佐賀県基山町では約600羽

エミューが国内で飼育されている例として、特に規模が大きいのが佐賀県基山町です。日本語版ウィキペディアによると、2022年時点で約600羽が飼育されていたとされています。

エミューの飼育が各地で進められてきた背景には、産業としての可能性があります。東京農業大学発のベンチャー企業によると、エミューは地域活性化の手段として、地方の雇用環境の改善や新規産業モデルの構築を目指して研究されてきました。肉は高たんぱく・低カロリーで、豚肉の約4倍の鉄分を含むとされます。脂肪から採れるオイルはスキンケア商品などへの活用が見込まれ、深緑色の卵の殻はエッグアートなどに加工され、1つの根元から2枚の羽根が生える珍しい羽根は、オーストラリアでは寝具などの羽毛商品として販売されています。

また、エミューの飼育事業を行う企業は、耕作放棄地で飼育すれば雑草を食べてくれるため、飼育しながら土地の管理ができるという利点を挙げています。同社によると、オーストラリアでは1,000頭を2人で飼育している例も報告されており、おとなしく人懐っこい性格で飼育しやすい動物だといいます。

ただし、こうした例はいずれも、事業として十分な環境と知識を持って飼育しているものです。誰にでも気軽に勧められるものではありません。

飼うために必要な広さ・費用・餌の現実

では、エミューを飼うにはどのような条件が必要なのでしょうか。

広さについて、個人がエミューを飼う場合の具体的な数値基準は、法令では定められていません。ただ、エミューは時速50キロ程度で走ることができるとされる鳥です。狭い場所に閉じ込めておけば運動不足やストレスにつながり、健康を損なうおそれがあります。相応の広さの運動スペースが必要だと考えるべきでしょう。

餌については、エミューは雑食で、草や花、昆虫なども食べます。東京農業大学発のベンチャー企業の飼育員によると、ニンジン、キャベツ、柳や白樺などの葉物を好むといいます。

飼育上の特有の注意点もあります。同社の飼育員によると、エミューは光る物に興味を持ってすぐに食べてしまう習性があるため、釘やネジ、針金の切れ端、ビニールなどを飼育場所に落とさないことが重要とされています。誤飲はけがや病気の原因になります。

購入価格や餌代などの費用については、販売業者や飼育環境によって大きく異なり、公的な目安は見当たりません。検討する場合は、購入先や、実際に飼育している牧場などに具体的に相談するのが確実です。何より、同社によるとエミューの寿命は約5〜10年で鳥類の中では長い部類に入り、同社の飼育場では18年生きている個体もいるといいます。長期にわたって責任を持って飼い続けられるかどうかを最初に考える必要があります。

動物が逃げたら飼い主の責任は?

動物愛護管理法が定める「逃走を防ぐ努力義務」

飼っている動物が逃げ出した場合、飼い主にはどのような責任があるのでしょうか。まず確認したいのが、動物愛護管理法第7条です。

同条第1項は、動物の所有者または占有者に対し、動物をその種類や習性等に応じて適正に飼養・保管し、動物の健康と安全を保持するよう努めるとともに、「動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、生活環境の保全上の支障を生じさせ、又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない」と定めています。

そして第3項では、逃走の防止について次のように定めています。

動物の所有者又は占有者は、その所有し、又は占有する動物の逸走を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

これは「努力義務」と呼ばれる規定で、違反しただけで直ちに罰則が科されるものではありません。しかし、飼い主が動物の逃走を防ぐために必要な措置を講じる責任を負っていることを、法律が明確に示しているという意味で重要です。この規定は、ペットとして飼う個人にも、事業として動物を扱う事業者にも共通して適用されます。

加えて、第一種動物取扱業者の場合は、飼養施設の構造や管理について守るべき基準が定められています。これらが守られていない場合には、都道府県知事などが改善を勧告したり命令したりする仕組みがあり、命令に従わなければ前述の罰則の対象となりえます。

けが人や物損が出た場合の民事上の責任

逃げ出した動物が人にけがをさせたり、物を壊したりした場合には、民事上の損害賠償責任が問題になります。根拠となるのが民法第718条です。

同条第1項は、動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負うと定めています。ここでいう「占有者」とは、動物を事実上支配している人のことで、通常は飼い主が該当します。ただし同項のただし書きでは、占有者が「動物の種類及び性質に従い相当の注意を持ってその管理をした」ことを証明すれば、責任を免れる余地があるとされています。

もっとも、犬の咬みつき事故を例にした東京都動物愛護相談センターの解説によると、この免責が認められるのは「大変難しく」、不可抗力だった場合や、被害者がわざと動物を怒らせたといった特殊な事情を証明できない限り、ほとんど免責されないとされています。また、被害者側にも落ち度があれば賠償額が減額される過失相殺はよく行われる一方、事故後に逃げてしまうなど対応が悪いと悪質とされ、慰謝料が増額されることもあると指摘されています。

つまり、動物が逃げて他人に損害を与えた場合、飼い主はほぼ確実に賠償責任を負うと考えておくべきだということです。大型の動物を飼う場合は、万が一に備えた保険への加入を検討することも現実的な備えになります(どの動物・どの事故が補償の対象になるかは契約によって異なるため、保険会社への確認が必要です)。

まとめ

  • 2026年9月23日、滋賀県守山市で「ダチョウ」と通報された鳥は、移動動物園の経営者の自宅で飼われていたエミューでした。約2時間後に捕獲され、けが人は報じられていません。
  • エミューはオーストラリア原産で、ダチョウより小さく、足の指は3本です。一緒に飼われていた「アメリカダチョウ」は、南米のレアという別の鳥です。
  • 基本的には温厚ですが、驚くと高速で走り回ります。逃げた大型の鳥に出会ったら、近づかず、追いかけず、110番しましょう。
  • 動物を見せる仕事には第一種動物取扱業の登録が必要で、飼い主には動物の逃走を防ぐ努力義務があります。

参考・出典