アジア大会

キム・ジュハとは?韓国の女子100m選手、アジア大会で2日続けて自己ベスト


愛知・名古屋アジア大会の陸上女子100メートルに出場した韓国のキム・ジュハ(金周夏)選手が、日本でも話題になっています。ニュースでは「陸上の女神」「スプリント・クイーン」といった呼び名とともに紹介され、大会の食事について語った発言も大きく取り上げられました。「どんな選手なの?」「結果はどうだった?」「食事について何と言ったの?」と気になった方も多いのではないでしょうか。

この記事では、キム・ジュハ選手のアジア大会での結果と、2日続けて自己ベストを更新した記録の意味を整理します。あわせて、確認できる範囲でのプロフィールや、レース後に語った言葉、韓国の女子短距離が置かれている状況についても紹介します。食事や移動についての発言は、切り取られた形で広まりやすいため、発言の前後の文脈も含めて紹介します。

アジア大会の結果

予選は11秒73(4組3着)、準決勝は11秒68(2組6着)で敗退

キム・ジュハ選手は、2026年9月24日に名古屋市瑞穂公園陸上競技場で行われたアジア大会の陸上女子100メートル予選に出場しました。RONSPOによると、4組の7レーンを走り、後半にスピードを上げて先頭集団と競り合い、11秒73の3着でゴールしています。この記録で準決勝進出を決めました。同じ4組では、日本の井戸アビゲイル風果選手が11秒59の2着でした。

翌25日の準決勝では、2組に出場しました。デイリースポーツによると、中盤から上位の選手に離され、6着でフィニッシュしました。記録は11秒68で、決勝には進めませんでした。韓国メディア「トップスターニュース」によると、準決勝は25日の19時13分、決勝は同じ日の22時10分に始まる日程でした。

なお、一部の記事では準決勝が26日と書かれていますが、デイリースポーツが25日の準決勝の結果を伝えているほか、韓国メディアも準決勝を25日と報じており、25日が正しいとみられます。

2日続けて自己ベストを更新(それまでの自己ベストは6月の11秒76)

キム・ジュハ選手は、アジア大会の前まで、6月に出した11秒76を自己ベストとしていました(RONSPO)。韓国のスポーツメディア「SPOTV NEWS」によると、この11秒76は今シーズンのベスト記録でもありました。

アジア大会では、24日の予選で11秒73をマークし、自己ベストを0秒03更新しました。さらに25日の準決勝では11秒68を出し、自己ベストをもう一度更新しています。

  • 大会前:11秒76(2026年6月)
  • 9月24日 予選:11秒73(4組3着)
  • 9月25日 準決勝:11秒68(2組6着)

国際大会の大舞台で、2日続けて自己ベストを更新するのは簡単なことではありません。決勝には届きませんでしたが、キム・ジュハ選手にとっては、自分の力を最大限に発揮できた大会だったといえます。準決勝のあとには笑顔も見せていたと、デイリースポーツは伝えています。

同じ韓国代表の女子100メートルでは、ソ・ジヒョン選手も予選で11秒83の自己ベストを出して準決勝に進みました(SPOTV NEWS)。SPOTV NEWSは、2人がそろって自己ベストで準決勝に進んだことを「可能性を確認した」と前向きに伝えています。

プロフィール(25歳。所属や主な戦績は確認できる範囲で)

キム・ジュハ選手は25歳で、韓国の京畿道にある始興(シフン)市の市役所の陸上チーム「始興市庁」に所属しています(SPOTV NEWS、Daum)。韓国では、自治体が実業団のような形で陸上チームを持ち、選手が所属して競技を続けることが多くあります。

主な戦績としては、韓国のポータルサイト「Daum」に掲載された記事によると、2026年5月11日に行われた第80回全国陸上競技選手権大会の女子100メートルで優勝しています。この大会は、アジア大会の代表選考会を兼ねていました。記録は11秒66でしたが、追い風が2.1メートルと、公認記録として認められる上限(2.0メートル)をわずかに超えていたため、公式記録にはなりませんでした。大会前の自己ベストが11秒76とされているのは、このためです。同じ記事は、キム選手がその前の週の大会(11秒87)でも100メートルで優勝し、2週続けてタイトルを獲得したと伝えています。

出身地や身長、競技を始めたきっかけ、これまでの国際大会の出場歴などは、確認できた報道の範囲では分かりませんでした。今回のアジア大会について、本人は「夢に見ていたアジア大会」と話しており、アジア大会はキム選手にとって大きな目標の一つだったことがうかがえます。

韓国で「スプリント・クイーン」と呼ばれる理由

日本の報道では、キム・ジュハ選手は「陸上の女神」「スプリント・クイーン」と紹介されています。日刊スポーツによると、韓国でこうした呼び名で呼ばれているといいます。

「スプリント・クイーン」という呼び名は、国内の主要大会の女子100メートルで優勝を重ねていることと関係していると考えられますが、韓国でいつ、誰がこうした呼び名を使い始めたのかは確認できていません。

日本のSNSでも、キム選手に注目する声が上がりました。しかし、キム選手がアジア大会で示したのは、何よりもスプリンターとしての力です。この記事では、競技の結果と本人の言葉を中心に紹介します。

レース後の言葉

「夢に見ていたアジア大会。とにかく楽しもうと思った」

9月24日の予選のあと、キム・ジュハ選手は取材エリアで次のように語りました。日刊スポーツの翻訳によると、キム選手は「夢に見ていたアジア大会。後悔のない良いレースができたらという思いで『とにかく楽しもう』としたことで、気持ちよく走れたと思う。その結果、自己ベストも更新できて誇らしい」と話しています。

RONSPOの翻訳では、「今日、体をほぐしているときは昨日よりもさらに良い感じだった」とも話しており、当日の体の状態の良さを実感していたことが分かります。大きな舞台で緊張するのではなく、楽しむことに気持ちを向けたことが、自己ベストにつながったといえそうです。

SNSでの「貴重な2つのチャンスを悔いなく駆け抜けた」

準決勝のあと、キム選手は自身のSNSに「貴重な2つのチャンスを悔いなく駆け抜けた」とつづりました。デイリースポーツが伝えています。

「2つのチャンス」とは、予選と準決勝の2本のレースのことを指しているとみられます。決勝には進めませんでしたが、2本とも自己ベストを出したことに、悔いのない思いを込めた言葉です。予選のあとに語った「後悔のない良いレースをしたい」という思いを、そのまま結果で示した形です。

食事や移動について話した内容と、発言の前後の文脈

キム選手の発言の中で、日本で大きく報じられたのが食事と移動についての言葉です。韓国メディア「エックスポーツニュース」が伝え、日刊スポーツやRONSPOが日本語に訳して紹介しました。

この発言が出たのは、24日の予選で自己ベストを出したあとの取材です。キム選手は、先に紹介したように自己ベストを出した喜びを語ったあとで、食事について次のように話しました。日刊スポーツの翻訳では、「ホテルのご飯が思った以上にあまりにも貧相で、最高のパフォーマンスを発揮できるかすごく心配していた。それでもできる限り栄養のあるものを選んで食べたので、食事は残念だが(記録が)しっかり出せてよかった」という内容です。RONSPOは「貧相」を「お粗末」と訳しています。

移動については、「移動も決して近い距離ではない。バスで50分ほど移動しなければならず疲労感はあるが、すぐに適応できたようでよかった」と話しました(日刊スポーツの翻訳)。

発言の全体を見ると、キム選手は食事や移動への不満を口にしながらも、「それでも記録が出せてよかった」「すぐに適応できた」と、前向きな言葉で締めくくっています。日本の報道の見出しでは不満の部分が強調されましたが、本人は大会の運営を一方的に批判したわけではなく、厳しい環境の中でも結果を出せた手応えを語っていたと読むこともできます。具体的にどのような食事がどう問題だったのかは、語られていません。

今大会では、選手村がなく、選手がホテルやクルーズ船、コンテナ型の宿泊施設に分かれて滞在しています。食事や移動への不満は、キム選手だけでなく、ほかの国の選手団からも出ていました。その背景は「アジア大会の食事や移動に不満が続出したのはなぜ?選手村がない大会で起きたトラブルと、組織委員会の説明」でまとめています。

韓国女子短距離の現在地

韓国の女子100メートルの韓国記録は、イ・ヨンスク選手が1994年6月17日に出した11秒49です。SPOTV NEWSによると、この記録は32年間破られていません。キム選手の11秒68は、韓国記録にあと0秒19まで迫る記録です。

一方で、韓国の女子短距離には新しい世代も現れています。SPOTV NEWSやSTARNEWSによると、14歳の中学生が2026年9月18日に100メートルで11秒76をマークし、中学生の部の韓国記録を更新しました。この記録は、2026年に韓国の女子選手が出した100メートルの最高記録に並ぶものでした。

キム・ジュハ選手とソ・ジヒョン選手がアジア大会で出した自己ベストは、こうした若い世代の台頭とあわせて、韓国の女子短距離が少しずつレベルを上げていることを示しているといえます。なお、男子100メートルの韓国記録は、キム・ククヨン選手が2017年に出した10秒07です。

今大会の女子100メートル決勝は、中国の陳妤頡(チェン・ユージエ)選手が11秒06で優勝しました。月刊陸上競技によると、24年ぶりの大会新記録で、U20(20歳未満)のアジア新記録でもありました。日本の御家瀬緑選手は11秒43で4位で、メダルまであと0秒10だったと伝えられています。キム選手の11秒68は、優勝タイムとは0秒62の差です。アジアのトップとの差はまだありますが、今大会で見せた記録の伸びは、キム選手の今後につながるものです。

まとめ

キム・ジュハ選手について、この記事のポイントを整理します。

  • 韓国・始興市庁に所属する25歳の女子短距離選手。2026年5月の韓国全国陸上競技選手権の女子100メートルで優勝(11秒66は追い風参考)
  • アジア大会では、9月24日の予選で11秒73(4組3着)、25日の準決勝で11秒68(2組6着)と、2日続けて自己ベストを更新したが、決勝には進めなかった
  • レース後には「夢に見ていたアジア大会。とにかく楽しもうと思った」と語り、SNSで「貴重な2つのチャンスを悔いなく駆け抜けた」とつづった
  • 食事や移動への不満も口にしたが、「それでも記録が出せてよかった」と前向きな言葉で締めくくっていた
  • 韓国の女子100メートルの韓国記録は、1994年の11秒49。キム選手の11秒68は、その記録に0秒19差まで迫っている。決勝は中国の陳妤頡選手が11秒06の大会新で優勝

決勝進出はならなかったものの、大舞台で2日続けて自己ベストを出したキム・ジュハ選手は、韓国の女子短距離の現在地を示す存在です。32年間破られていない韓国記録に向けて、これからどこまで記録を伸ばしていくのかに注目しましょう。

関連記事


参考・出典