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アジア大会

愛知・名古屋アジア大会の運営トラブルまとめ|宿泊・食事・輸送、3700億円の費用、空席と放送の問題まで


2026年9月19日から10月4日まで開かれた愛知・名古屋アジア大会では、日本選手の活躍と並んで、運営のトラブルが連日のように報じられました。「クルーズ船に6時間乗れなかった」「食事が少ない」「バスが来なかった」「チケット完売なのに空席だらけ」など、断片的なニュースを見て、全体として何が起きたのか分からなくなっている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、大会中に報じられた主なトラブルを日付順に整理したうえで、背景にある「選手村を作らない」宿泊計画と約3700億円の経費、空席とチケットの問題、放送・配信の問題までをまとめます。

要点:選手村なしの分散型の大会で、宿泊・食事・輸送・進行のトラブルが続いた

  • 費用を抑えるため選手村を作らず、1万7000人を超える選手と役員をクルーズ船、コンテナ型の宿舎、ホテルに分けて受け入れた。宿泊の手続き、食事、移動で不満が相次いだ。
  • 国歌の取り違え、韓国バスケ男子のバスが来なかった件、バドミントンの深夜0時過ぎの試合など、運営のミスも続いた。組織委員会は謝罪し、改善を約束した。
  • 経費はアジアパラ大会などを含めて約3700億円と、当初想定の約3.7倍。チケットは「全体的に好調」とされた一方、競技によって売れ行きの差が大きく、空席も目立った。
日付 主な出来事 分野
9月16日 中国の張博恒選手、クルーズ船に乗るまで6時間待ち 宿泊
9月18日 ホッケー男子の韓国戦で北朝鮮の国歌が流れ、組織委が謝罪 式典
開幕前後 クルーズ船のロビーでの待機、コンテナ型宿舎の水漏れ・ベッドの長さ、テックボール会場の食事への不満 宿泊・食事
9月19日 開会式。地上波の生中継はなく、客席の空席も話題に 放送・観客
9月20日 バスケ男子の韓国代表、決勝当日にバスが来ず練習中止 輸送
9月22日 組織委員会が見解を公表し、会見で国歌の件などを釈明・謝罪 組織委の対応
9月24日 韓国陸上のキム・ジュハ選手がホテルの食事と移動に不満 食事・輸送
9月25〜26日 組織委がチケット販売状況を発表。事務総長が運営ミスを改めて謝罪 観客・組織委の対応
9月27日 バドミントン宮崎友花選手の試合が午前0時8分に開始 競技進行

開幕前:クルーズ船で6時間待ち、国歌の取り違え

9月16日:張博恒選手「クルーズ船に乗るまで6時間」

AFP通信によると、パリ五輪の体操男子で銀メダルを獲得した中国の張博恒選手は、9月16日に来日したあと、宿泊施設に入るまでに6時間も待たされたと語りました。登録や書類手続きで待ち時間が発生し、船に着いてからも激しい雨のために乗船できなかったといいます。張選手は「午前7時に朝食をとった後、次に食事ができたのが午後7時近くになるとは思わなかった」と訴え、最終的には自分でホテルの部屋を予約したと明かしています。時事通信も、日本選手団の話として、16日にクルーズ船の乗船に約6時間かかった日本選手がいたと報じました。

9月18日:ホッケーの韓国戦で北朝鮮の国歌が流れる

開幕前日の9月18日には、岐阜県グリーンスタジアムで行われたホッケー男子1次リーグの韓国対バングラデシュ戦の前に、韓国の国歌ではなく北朝鮮の国歌が流れました(時事通信、JBpress)。時事通信が伝えた韓国MBCテレビの報道によると、韓国国歌は試合開始の直前に流れ、チームは国歌を斉唱できなかったといいます。組織委員会は事実を認め、18日の夜には関係者2人が韓国選手団の事務所を訪れて公式に謝罪しました(JBpress)。

開幕前後:宿泊と食事への不満

クルーズ船とコンテナ型の宿舎:「床で待機」「歴代最悪」

週刊女性PRIMEによると、タイのセパタクロー代表は、クルーズ船「コスタ・セレーナ」で名前が宿泊者名簿に確認できず、チェックインできませんでした。選手たちが船内のロビーで寝ころびながら待つ姿が、SNSで広がりました。

名古屋港のガーデンふ頭に設けられたコンテナ型の宿泊施設では、次のような問題が報じられました。

  • ベッドの長さは1メートル95センチで、身長2メートルを超える選手は足を伸ばせない。延長用マットレスで対応した(週刊女性PRIME、AFP通信など)
  • 韓国の選手の部屋で洗面台から水が漏れ、床が水浸しに。組織委員会は9月14日までに応急措置と修繕を終えたと説明した(産経新聞など)
  • 記録的な大雨の際に、400人あまりが一時避難した(時事通信など)

韓国バスケットボール協会の副会長は「宿泊環境だけを見れば過去最悪だ」と述べたと報じられています。英BBCも、災害時の避難施設として再利用できるよう設計されたコンテナに「苦情が相次いでいる」と伝えました。

中京テレビの取材によると、コンテナ型の宿舎はコの字型に約200棟が並び、約2000人を受け入れる計画でした。食堂やジムは共用棟に集められていて、部屋はベッドと簡素な机が中心という「必要最低限」の造りです。

テックボール会場の食事:「鶏肉3切れ」

テックボールのタイ代表監督は、競技会場で受け取った昼食の様子をSNSに投稿し、「ほんの少ししかくれなかった。野菜は1種類しか選べずに2種類を食べたくでもダメなんだって」と不満をつづりました(RONSPO)。中央日報によると、昼食はご飯とスープに、使い捨て容器に載った鶏肉3切れと麺などで、スタッフが盛り付ける配給方式でした。量が足りなかったため、チームは会場の外で食事をとったと報じられています。

組織委員会は9月22日の見解で、この食事について「当該飲食は組織委員会が提供したものではありません」と説明しています。

9月20日:韓国バスケ男子、決勝当日にバスが来ず練習中止

輸送面で最も大きく報じられたのが、バスケットボール男子の韓国代表のトラブルです。日刊スポーツやデイリースポーツによると、韓国代表は9月20日の日本との決勝の当日、午前中の練習会場へ向かうバスが宿舎に来ず、練習を中止しました。韓国のソウル新聞によると、選手たちはホテルの前で20分ほど待ったといいます。CoCoKARAnextは、関係者の話として、説明は「担当者が見落とした」というものだけだったと伝えています。韓国のオリンピック委員会(大韓体育会)は、組織委員会とアジア・オリンピック評議会(OCA)に抗議する方針を示しました。

この日の決勝は韓国が日本に67-57で勝ち、日本は64年ぶりの銀メダルでした(バスケットボールキング)。詳しい経緯は「【バスケ日韓戦】韓国のバスが来なかった件は偶然?兵役免除・“多国籍”批判までまとめてわかる」でまとめています。

9月22日:組織委員会が見解を公表、会見で釈明

相次ぐ批判を受けて、組織委員会は9月22日に公式サイトで見解を公表しました。クルーズ船への乗船が遅れた問題については、「一部の選手団から提出された書類の不備について、その調整に時間を要したことが、乗船の遅延や混乱の主な理由であると認識しております」と説明しています。一方、デイリースポーツによると、タイのメディアは、タイ選手団の副団長が「日本側が選手の書類を宿泊システムに送信するのを忘れたため」と話したと伝えており、両者の説明は食い違っています。

声明では、必要な改善を行うと約束しました。ただし、デイリースポーツは、この声明がバスの問題など輸送面には触れていなかったことを指摘しています。

同じ22日には、組織委員会が開会式後初めて報道陣の取材に応じました。共同通信の配信によると、国歌の取り違えについて韓国側に謝罪し、再発防止策の徹底に努めているとしました。大参孝彰事務局次長は、クルーズ船の宿泊手続きに時間がかかったのは、事前に提出されていたリストと実際の宿泊者に違いがあったことが一因だと説明しています。

9月24日:キム・ジュハ選手「ホテルの食事があまりにも貧相」

韓国の陸上女子短距離のキム・ジュハ選手は、9月24日の女子100メートル予選で自己ベストを出したあと、「ホテルのご飯が思った以上にあまりにも貧相で、最高のパフォーマンスを発揮できるかすごく心配していた」と話しました(日刊スポーツ)。移動についても「バスで50分ほど移動しなければならず疲労感はある」と語っています。キム選手については「キム・ジュハとは?韓国の女子100m選手、アジア大会で2日続けて自己ベスト」で紹介しています。

タイ選手団の団長は、タイのメディアに対して「滞在している多くのホテルがアジア大会のシステムに入っていないからです。そのため、ホテル側が適切に対応することができませんでした」と語りました(RONSPO)。車や洗濯、食事の手配などは、タイの選手団側で追加の対応をしなければならなかったといいます。

NHKは同じ24日、組織委員会が「出てきている課題を真摯に受け止め、できる限りの対応を行う」としていると報じました。

9月26日:事務総長が改めて謝罪

9月26日には、組織委員会の村手聡事務総長が記者会見で大会前半の状況を説明しました。宿泊施設や送迎バスをめぐるトラブルについて、「原因はさまざまだが、ミスが起こったことは率直におわび申し上げたい」と謝罪しています(時事通信)。

9月27日:バドミントン宮崎友花選手の試合が午前0時8分に開始

9月26日には、競技の進行でも問題が起きました。日刊スポーツによると、バドミントン女子シングルス3回戦の宮崎友花選手とシンドゥ・プサルラ選手(インド)の試合は、日付をまたいだ27日の午前0時8分に始まりました。この日は4コートで試合を進め、宮崎選手の試合は第2コートの17試合目に組まれていました。試合が始まったころには会場から最寄り駅へのシャトルバスが終わっていて、ほぼ観客がいない中での試合となりました(東スポWEB)。

SNSでは、「選手の安全に関わる」と選手の体調を心配する声や、「時間的に無理だと判断して帰ってきました」という観戦をあきらめたファンの声、「さすがに運営がおかしいだろ」という運営への疑問が相次ぎました(日刊スポーツ、東スポWEB)。海外メディアからも批判の声が上がったと報じられています(THE DIGEST)。

テニスの男子ツアー(ATP)と女子ツアー(WTA)は、深夜の試合を減らすため、2024年から「午後11時以降は原則として新しい試合を始めない」「遅れている試合は別のコートに移す」といったガイドラインを試しています(Tennis.com)。詳しい経緯は「宮崎友花の試合はなぜ深夜0時過ぎに?」でまとめています。

なぜこうなった? 選手村を作らない宿泊計画

1万7000人超を3種類の施設に分散

オリンピックや過去のアジア大会では、多くの場合、選手と役員がまとまって滞在する選手村が用意されます。今大会の選手と役員は1万7000人を超え(AFP通信)、組織委員会は次の3種類の施設に分けて受け入れました。

  • クルーズ船「コスタ・セレーナ」:名古屋港の金城ふ頭に停泊。客室約1500室で、9月15日から10月6日まで約4000人を受け入れる計画(HotelBank)
  • コンテナ型の宿泊施設:名古屋港のガーデンふ頭に設置。約2000人が滞在でき、大会後は平時のホテルや災害時の応急仮設住宅などに活用する計画(組織委員会)
  • ホテル:名古屋市内や愛知県内などの既存のホテル

当初は名古屋競馬場の跡地に選手村を建設する計画でしたが、建築資材の高騰などを背景に、愛知県は2025年2月に整備の取りやめを明らかにしました。中央日報によると、参加者は当初1万5000人前後と想定されていましたが、正式競技の追加で1万7000人に増え、宿泊の混乱につながったと指摘されています。

分散型が生んだ「ばらつき」と「移動の負担」

宿泊先が分かれていると、施設ごとに食事の内容やサービスの水準に差が出やすくなります。タイ選手団の団長も「選手を3つの場所に分散させたことで、選手たちの滞在環境の基準は当然異なり同じ基準にすることはできません」と指摘しました(RONSPO)。宿泊先から各会場へ向かうバスの路線も増え、運行の管理が複雑になります。キム・ジュハ選手が語った「50分の移動」も、宿泊先と会場が離れていることから生じた負担です。

一方で、既存の施設を使い、大会後に使い道のない施設を残さないという方向は、オリンピックでも推奨されている考え方です。東京2021の選手村は大会後に住宅「晴海フラッグ」に転用されましたが、そうした転用は需要のある立地でなければ成り立ちません。今大会で問われたのは、分散型という方式を成り立たせるための受け入れ人数の見積もりや、設備の事前の確認、現場の人員配置が十分だったかどうかだといえます。

経費は約3700億円:「安くしたのに高い」はなぜ?

愛知県知事が公表した最終見通しによると、アジア大会とアジアパラ大会の経費は約3700億円です。当初の想定は1000億円程度だったため、約3.7倍になります(中日BIZナビ)。メ~テレによると、内訳は次のとおりです。

区分 金額 主な中身
大会経費 2980億円 競技会場の整備、選手団の宿泊費など
関連経費 約700億円 開催地として行うPR活動など

知事は、費用が増えた理由として、建設資材や人件費の高騰と、競技数の増加を挙げています。国からは136億円の補助が決まっています。

ただし、公表されている内訳には、会場整備、宿泊、警備といった項目ごとの増加額は示されていません。選手村を作らなかったことでどれだけ節約できたのか、宿泊や食事にどれだけの費用をかけたのかは、公表された数字からは分かりません。

チケット「完売」なのに空席が目立ったのはなぜ?

バスケ決勝のベンチ裏、開会式の客席

9月20日のバスケットボール男子決勝では、ベンチ裏の最前列など、いわゆる特等席がごっそり空いている様子が中継に映り、SNSで「チケット完売してるんよね…?」と疑問の声が上がりました(東スポWEB)。9月19日の開会式でも、約3万人収容のスタンドに空席が目立ち、話題になりました(スポーツ報知)。

組織委員会の説明:販売率と「来られない方」

読売新聞オンラインによると、組織委員会は9月25日、23日時点のチケット販売状況を発表しました。

  • 9割以上:開会式と、卓球など13競技
  • 8割以上:バスケットボールやテニスなど7競技
  • 6割以上:水泳やハンドボールなど13競技
  • 6割以下:閉会式や、サッカーなど収容人数が多い会場で行われる競技

組織委員会は、空席が目立ったことについて、演出上の理由などで販売できない席があったことや、観客が見やすい場所に移動したことを挙げました。村手事務総長は9月26日の会見で、空席について「満足はしていない」と述べ、「関係者席では確保したのに来られない方もいる」と語っています。開会式についても、チケットは9割以上売れたものの、当日来場しなかった人が出たと説明しました(AFP=時事、時事通信)。

大規模な国際大会では、スポンサーや関係者向けの招待席として良い席が確保されることが多く、その人たちが来なければ特等席だけが空くことになります。組織委員会の説明は、こうした仕組みを認めた形です。

放送・配信の問題

開会式は地上波で生中継されず

今大会の日本国内での放送は、TBS系の地上波と、20競技以上をライブ配信したU-NEXTが中心でした。9月19日の開会式は地上波での生中継がなく、U-NEXTでのライブ配信となったため、「てっきり観られると思った」という声が上がりました(Goal.com)。

バスケ銀メダルの直後に録画中継へ切り替え

9月20日のバスケットボール男子決勝では、試合が終わり、大会アンバサダーの二宮和也さんと石川佳純さんが短くコメントしたあと、すぐにサッカー男子・日本対キルギス戦の録画中継に切り替わりました。選手のインタビューが放送されなかったことに、「銀メダルだよ?」といった批判が出ました(東スポWEB)。1つの局が40を超える競技の放送枠をやりくりする難しさがある一方で、64年ぶりのメダルの瞬間を最後まで見たかった視聴者の不満が残りました。

アジアパラ大会へ

アジア大会のあとには、第5回アジアパラ競技大会が10月18日から24日までの7日間、愛知・名古屋で開かれます(NAGOYAJIN)。車いすを使う選手や視覚に障害のある選手も多く参加するため、宿泊施設のバリアフリー対応や会場までの移動の手配が、アジア大会以上に重要になります。アジア大会で見つかった課題がどこまで生かされるかが問われます。

まとめ

  • 愛知・名古屋アジア大会は、費用を抑えるために選手村を作らず、1万7000人を超える選手と役員をクルーズ船、コンテナ型の宿舎、ホテルに分けて受け入れました。
  • 宿泊の手続きでの長時間待ち、コンテナ型宿舎の水漏れやベッドの長さ、食事の量、移動の負担、国歌の取り違え、バスが来なかった件、深夜0時過ぎの試合などのトラブルが続き、組織委員会は謝罪と改善を約束しました。
  • 経費はアジアパラ大会などを含めて約3700億円と当初想定の約3.7倍で、知事は資材や人件費の高騰と競技数の増加を理由に挙げています。
  • チケットは競技による差が大きく、関係者席の不在や当日来場しない人によって空席が目立ちました。開会式の地上波中継がなかったことや、バスケ銀メダル直後の中継切り替えにも不満の声が上がりました。

閉会式(10月4日)については、アジア大会閉会式にマツケンサンバ!で整理しています。

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参考・出典