愛知・名古屋アジア大会のバドミントン女子シングルスで、宮崎友花選手(ACT SAIKYO)の試合が日付をまたいだ午前0時8分に始まり、大きな話題になっています。SNSでは「録画じゃなかったんだ」「選手がかわいそう」といった声が相次ぎ、「どうしてこんな時間になったの?」と疑問に思った方も多いのではないでしょうか。
この記事では、宮崎選手とシンドゥ・プサルラ選手(インド)の3回戦がどのような状況で行われたのかを整理したうえで、試合がここまで遅くなった背景を、大会の日程とバドミントンの試合進行の仕組みから解説します。大会の組織委員会が翌27日に出した説明もあわせて紹介します。
宮崎友花とシンドゥの3回戦は、27日午前0時8分に始まった
試合結果(0-2/9-21、13-21)
宮崎友花選手は2006年8月17日生まれの20歳で、世界ランキング7位の日本のエースの一人です。宮崎選手の経歴やプレースタイル、シンドゥ選手の実績は「宮崎友花とは?20歳で世界ランキング7位のバドミントン選手|経歴・強さと、アジア大会で対戦したシンドゥの実績」で紹介しています。今大会では、9月20日から24日に行われた女子団体戦にも出場し、日本の銀メダル獲得に貢献しました。団体戦のあとに始まった個人戦の女子シングルスでは、9月26日に2回戦と3回戦の2試合を同じ日に戦う日程でした。
問題の3回戦の相手は、インドのシンドゥ・プサルラ選手です。シンドゥ選手は2016年のリオデジャネイロ五輪で女子シングルスの銀メダルを獲得した実績を持つ、インドを代表する選手です。日刊スポーツによると、この試合は日付が変わった27日の午前0時8分に始まり、宮崎選手は0-2(9-21、13-21)のストレートで敗れました。
インドのメディアはこの試合を「ラウンド16(ベスト16)」と表記していますが、日本の報道でいう「3回戦」と同じ試合です。また、26日に予定されていた3回戦が、実際には27日に入ってから始まったため、報道によって「26日の試合」「27日の試合」と日付の書き方が分かれています。この記事では、「26日に予定されていた3回戦が、27日午前0時8分に始まった」と整理しています。
会場の様子(シャトルバスが終わり、ほぼ観客がいない中での試合)
会場は、愛知県一宮市の一宮市総合体育館です。東スポWEBによると、試合が始まったころには、会場から最寄り駅へのシャトルバスの運行がすでに終わっていました。日本開催の大会でありながら、会場は閑散としており、日刊スポーツは「ほぼ無観客状態での開催となった」と伝えています。
SNSでは、「宮崎友花VSシンドゥを楽しみに待っていましたが時間的に無理だと判断して帰ってきました」という観客の声も紹介されています(東スポWEBによる)。自国開催の大舞台で、日本の若手エースの試合を多くのファンが見届けられなかったことになります。テレビやネット配信で試合を見た人からは、「録画じゃなかったんだ」と驚く声も上がりました。
なぜこんなに遅くなった?
組織委員会は27日、接戦で試合が長引き「競技全体の進行が遅延した」と説明しました。空いていたコートはテレビ放映に対応していなかったため、試合を移すことができず、深夜に始めることは競技関係者や放送事業者らが話し合って決めたということです(中日新聞)。以下、日程の組み方から詳しく見ていきます。
4コート進行で、宮崎の試合は第2コートの17試合目だった
日刊スポーツによると、26日の試合は4つのコートに分かれて行われ、宮崎選手の試合は第2コートの17試合目に組まれていました。1つのコートで17試合目ということは、その前に同じコートで16試合が行われていたことになります。
26日は、女子シングルスだけでなく、男子シングルス、女子ダブルス、男子ダブルス、混合ダブルスの5種目の試合が同じ会場で行われていました。1日に多くの種目の試合を消化する必要があり、1つのコートに多くの試合が詰め込まれていたことがうかがえます。
なお、インドメディアの『Sunday Guardian』は、シンドゥ選手と宮崎選手の試合を「第1コート」と伝えており、日刊スポーツの「第2コート」と食い違っています。組織委員会によると、最終的にはテレビ放映ができるコートが使われました。
もともとの予定時刻と、実際に始まった時刻の差
大会の日程をまとめたフットボールチャンネルによると、9月26日のバドミントンの競技時間は「9時30分〜20時30分」と予定されていました。つまり、予定では夜8時半ごろには全試合が終わる計画だったことになります。宮崎選手の試合が始まった午前0時8分は、この終了予定時刻から3時間半以上遅れていたことになります。
宮崎選手の3回戦そのものの予定時刻について、インドのメディア『Patrika』は、シンドゥ選手と宮崎選手の試合の開始予定をインド時間の午後6時30分(日本時間の午後10時)と伝えていました。この報道が正しければ、試合は予定より2時間ほど遅れて始まったことになります。ただし、この予定時刻はインドメディアの報道によるもので、大会公式の数字ではない点に注意が必要です。
大会の結果をまとめたサイト(TakeoriLab)によると、宮崎選手は同じ26日の2回戦(モンゴルの選手に21-5、21-5で勝利)を昼の12時20分ごろに戦っていました。2回戦から3回戦まで、およそ12時間待ったことになります。
組織委員会の説明:空いたコートはテレビ放映に対応していなかった
中日新聞によると、組織委員会は27日、接戦の試合が続いて「競技全体の進行が遅延した」と説明しました。試合が終わって空いたコートはあったものの、そのコートはテレビ放映に対応していなかったため、試合を移すことはできなかったといいます。深夜に試合を始める判断は、競技関係者や放送事業者らが協議して決めたと伝えられています。
日刊スポーツは、「通常の大会では遅い時間帯の試合は空いたコートに移されることもあるが、この日はそのような措置はなかったとみられる」と伝えていました。組織委員会の説明は、その理由がテレビ放映の設備にあったことを示しています。THE DIGESTは、今回のスケジュールを「破綻」と表現し、海外メディアから「馬鹿げてる」という声が上がったと報じました。東スポWEBによると、インドのメディアもSNSで不満を表明しています。SNSに寄せられた声や、インドメディアの受け止め方、テニスの深夜試合を減らすルールとの違いは「アジア大会バドミントン、深夜の試合にSNSで批判が殺到|観客・インドメディアの反応と、ほかの国際大会との違い」でまとめています。
バドミントンの試合が押しやすい理由
バドミントンの大会でスケジュールが遅れやすいのには、競技の特徴による理由があります。今回の件を理解するうえで参考になる、一般的な仕組みを解説します。
試合時間が読みにくい(2ゲームで終わる試合と、3ゲームの長い試合の差)
バドミントンの試合は、21点先取のゲームを3ゲーム行い、2ゲームを先に取った選手が勝つ「3ゲームマッチ」です。実力差がある試合なら2ゲームで終わり、宮崎選手の2回戦(21-5、21-5)のように短時間で決着します。一方、実力が近い選手同士の試合は3ゲームまでもつれ、20-20からの「デュース」が続くと、1試合で1時間を大きく超えることもあります。
同じ1試合でも、短い試合と長い試合では2倍以上の差が出ることがあります。そのため、1日のスケジュールを正確に組むのが難しく、長い試合が続くと、あとに組まれた試合がどんどん遅れていきます。1つのコートに17試合も組まれていれば、1試合あたりの遅れがわずかでも、積み重なると大きな遅れになります。
「前の試合が終わったら次」という進め方と、空いたコートへの移動(振替)
バドミントンの大会では、多くの場合、試合ごとに決まった開始時刻を設けるのではなく、「前の試合が終わったら、次の試合を始める」という方式で進めます。大会結果をまとめたサイトでも、この日の試合は「前の試合が終わり次第」の進行だったとされています。この方式は、コートを無駄なく使えるという利点がある一方、前の試合が長引くと、あとの試合の開始時刻が読めなくなるという欠点があります。
こうした遅れを防ぐため、国際大会では、あるコートの試合が早く終わって空いたときに、別のコートで待っている試合をそのコートに移す「振替」を行うことがあります。4つのコートのうち、1つでも早く空けば、遅れている試合をそちらに回すことで、全体の終了時刻を早めることができます。
今回は、空いたコートがテレビ放映に対応していなかったため、この振替ができなかったと組織委員会は説明しています(中日新聞)。
団体戦と個人戦が重なる日程の影響
今大会のバドミントンは、9月20日から24日までが男女の団体戦、25日から29日までが個人戦という日程です。つまり、宮崎選手の試合があった26日には、団体戦はすでに終わっており、団体戦と個人戦が同じ日に重なったわけではありません。
ただし、多くの選手が団体戦に続けて個人戦にも出場しているため、団体戦の5日間に続いて個人戦が始まる、選手にとっては休みの少ない日程です。さらに26日は、個人戦の5種目がすべて同じ日に2回戦(女子シングルスは3回戦も)を行う日程で、1日に消化する試合数が特に多い日でした。組織委員会は遅れの理由を接戦による進行の遅れと説明していますが、1日に組まれた試合の多さも、遅れが積み重なりやすい条件だったといえます。
選手への影響は?
試合が終わって会場を出て、寝られるのは何時か
宮崎選手の試合は午前0時8分に始まり、ストレートで決着しました。試合が終わったあとも、選手には取材対応、クールダウン、着替え、会場から宿舎への移動などが待っています。午前0時過ぎに始まった試合のあとにこれらの対応が続くことを考えると、宿舎に戻って休めるのは深夜遅くになったとみられます。
さらに宮崎選手の場合、同じ日の昼に2回戦を戦っており、そこから半日近く、いつ始まるかわからない次の試合を待ち続けていたことになります。待ち時間が長いと、食事や休憩のタイミング、体を温め直すウォーミングアップの時間の調整が難しくなります。敗戦と試合時間の関係については、この記事では推測しません。
翌日に試合がある選手の回復とコンディション
深夜の試合は、翌日に試合がある選手にとってはさらに大きな負担になります。今大会の日程では、27日に個人戦の準々決勝、28日に準決勝、29日に決勝が予定されており、27日の競技も朝9時30分に始まる予定です。前夜遅くまで試合をした選手が勝ち残った場合、十分な睡眠や回復の時間をとれないまま、次の試合に臨まなければならない可能性があります。
宮崎選手に勝ったシンドゥ選手も、27日の準々決勝に進んでいます。SNSでは「選手の安全に関わる」という声も上がっており、選手の健康とパフォーマンスの両面から、深夜の試合を問題視する意見が広がっています。
翌日以降の日程は変わる?
大会側の対応
組織委員会は27日に遅れの理由を説明しました。大会全体の運営トラブルについては、組織委員会が謝罪し、改善を約束しています(詳しくは下の運営トラブルまとめの記事で整理しています)。
27日の準々決勝以降は、ラウンドが進むごとに試合数が少なくなるため、26日ほど試合が詰め込まれる日はありません。そのため、26日のような大幅な遅れは起きにくいと考えられますが、長い試合が続けば遅れが出る可能性は残ります。今大会では、ほかの競技でも運営面の問題が話題になっています。宿泊や食事、輸送などのトラブルは「愛知・名古屋アジア大会の運営トラブルまとめ|宿泊・食事・輸送で何が起きた?日付順に整理」でまとめています。
まとめ
宮崎友花選手の試合が深夜0時過ぎに始まった件について、ポイントを整理します。
- 9月26日に予定されていた女子シングルス3回戦、宮崎友花対シンドゥ・プサルラは、27日午前0時8分に始まり、宮崎選手は0-2(9-21、13-21)で敗れた。シャトルバスが終わり、ほぼ無観客の中での試合だった
- 26日は4コートで5種目の試合を行い、宮崎選手の試合は第2コートの17試合目だった。競技時間は20時30分までの予定だったが、大幅に遅れた
- バドミントンは試合時間が読みにくく、「前の試合が終わり次第」の進行のため遅れが積み重なりやすい
- 組織委員会は、接戦で全体の進行が遅れ、空いたコートはテレビ放映に対応していなかったため試合を移せなかったと説明した。深夜の開始は競技関係者と放送事業者らの協議で決まった
20歳の宮崎選手にとって、自国開催のアジア大会は悔しい結果となりましたが、団体戦では銀メダル獲得に貢献しました。今回の件が、選手が最高の状態で戦える大会運営を考えるきっかけになることが期待されます。
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参考・出典
- アジア大会、バドミントン女子で午前0時過ぎに試合開始 組織委、接戦で「全体の進行が遅延」(中日新聞)
- 「酷すぎる」宮崎友花の試合が深夜0時過ぎに開始(日刊スポーツ)|Yahoo!ニュース
- 宮崎友花の試合開始が午前0時過ぎ 異例の運営に怒りの声|東スポWEB
- 宮崎友花がアジア大会“破綻”スケジュールの巻き添えに…|THE DIGEST
- 宮崎 友花|バドミントン|愛知・名古屋アジア大会|JOC
- Badminton – Asian Games 2026|愛知・名古屋2026 公式サイト
- アジア大会2026 バドミントンのテレビ放送・配信予定・日程|フットボールチャンネル
- Asian Games 2026: PV Sindhu Fights Back to Reach Women’s Singles Round of 16|Patrika
- PV Sindhu vs Tomoka Miyazaki Live Streaming|Sunday Guardian
- アジア大会2026 バドミントン 放送・日程・結果・日本代表|TakeoriLab