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「棋士」と「女流棋士」の違いとは?西山朋佳の偉業を3分で分かるように解説


2026年10月10日、将棋の西山朋佳白玲が、女性として初めて「棋士」になる資格を得たというニュースが大きく報じられました。ところが、ニュースを見て「西山さんはもともとプロの女流棋士なのに、なぜ『女性初の棋士』なの?」と、不思議に思った方も多いのではないでしょうか。

結論から申し上げると、将棋の世界では「棋士」と「女流棋士」は別々の制度になっています。棋士は男女を問わずなれる制度ですが、これまで女性で棋士になった人は一人もいませんでした。西山さんは、2025年6月に新しくできた「白玲5期」というルートで、その資格を初めて手にしたのです。

この記事では、All About ニュース、神戸新聞、共同通信、スポーツニッポンなどの報道をもとに、棋士と女流棋士の違い、女性が棋士になるためのルート、新しい規定ができた背景、そして女流棋士50年あまりの歩みを、できるだけ分かりやすく整理します。西山さんが権利を行使するかどうかは、2026年10月11日時点では保留中です。情報は2026年10月11日時点のものです。

棋士と女流棋士は別の制度

まずは、将棋のプロの世界にある2つの制度の違いを確認しましょう。どちらも日本将棋連盟に所属するプロですが、なるための道のりや、対局する舞台が異なります。

棋士になるには、奨励会の三段リーグを抜けて四段になるのが原則

「棋士」になるための原則的な道は、日本将棋連盟の棋士養成機関である「奨励会」に入り、段位を上げていくことです。奨励会の最終関門が「三段リーグ」と呼ばれるリーグ戦で、ここで上位に入ると四段に昇段し、棋士となります。

三段リーグは非常に狭き門です。All About ニュース(2026年8月20日)によると、三段リーグは40人ほどが参加して半年ごとに行われ、原則として上位2人だけが棋士になれます。奨励会には原則26歳までという年齢制限もあり、棋士になれずに奨励会を去っていく人が数多くいます。

棋士になると、名人戦につながる「順位戦」や、さまざまな公式棋戦で対局します。新しく四段になった棋士は、順位戦の一番下のクラスであるC級2組からスタートするのが原則です。棋士の世界には、男性・女性という区別はありません。

女流棋士は1974年に誕生した別の制度で、これまで女性の棋士は0人

一方の「女流棋士」は、女性のみがなれる制度です。スポーツニッポンによると、女流棋士は1974年に誕生し、同時に初のタイトル戦である女流名人戦が創設されました。女流棋士には、白玲、女流名人、女流王位、女流王将など、女流棋士だけが参加するタイトル戦があります。

All About ニュースによると、女流棋士は、棋士に比べて実力面のハードルが低く設定されています。そのため、女性のプロ棋士のほとんどは、女流棋士として活動してきました。棋士の制度は男女を問わず開かれていますが、三段リーグを突破して四段になった女性は、これまでに一人もいません。

つまり、「女性初の棋士」とは、女流棋士としてではなく、男性と同じ「棋士」の制度で、初めて女性がプロになるという意味です。西山さんが女流4冠という実績を持ちながら、「女性初の棋士」の資格獲得がニュースになったのは、このためです。

女性が棋士になる3つのルート

では、女性が棋士になるには、どのような道があるのでしょうか。現在、主に3つのルートがあります。

  • 奨励会の三段リーグを勝ち抜いて四段になる(原則のルート)
  • 棋士編入試験に合格する
  • 白玲を通算5期獲得し、フリークラス棋士の資格を得る(2025年新設)

以下では、それぞれのルートについて、西山さんや福間香奈さんの挑戦と合わせて見ていきます。

三段リーグ(西山さんは3位で、あと一歩)

西山さんは、もともと奨励会で棋士を目指していました。Wikipediaによると、西山さんは2010年3月に関西奨励会に入会し、2015年12月に三段に昇段しました。2020年3月に最終日を迎えた三段リーグでは、14勝4敗で3人が並び、順位の差で次点(3位)となって、女性初の四段昇段をあと一歩で逃しました。西山さんと福間さんのこれまでの歩みは、西山朋佳と福間香奈の白玲戦をおさらいで紹介しています。

その後、西山さんは2021年4月に女流棋士に転向しています。Wikipediaによると、福間香奈さんは、2014年4月からの三段リーグに女性として初めて参加しました。三段リーグは、女性にとっても挑戦の場となってきましたが、これまで突破した女性はいません。

棋士編入試験(西山さんは1回、福間さんは2回挑戦)

2つ目のルートが、棋士編入試験です。神戸新聞(2022年10月13日)によると、編入試験は、新人の棋士5人と月に1局ずつ対局し、3勝すれば合格という仕組みです。受験するには、棋士との公式戦の成績が直近で10勝以上、かつ勝率6割5分以上であることが必要とされています。

福間香奈さんは、この編入試験に2度挑戦しています。1回目は、里見香奈の名前で活動していた2022年で、神戸新聞によると、0勝3敗で不合格となりました。2回目は2026年1月からで、神戸新聞(2026年3月)によると、このときも初戦から3連敗で不合格でした。福間さんは「力不足を実感した」と語っています。

西山さんも、編入試験を1回受けています。Wikipediaによると、2024年9月に始まった試験で、2勝2敗で迎えた第5局に勝てば合格という場面まで迫りましたが、この対局に敗れ、2勝3敗で不合格となりました。なお、共同通信によると、編入試験の受験資格を3回得た人を四段とする「編入試験3回でプロ」案が2026年6月の総会で審議されましたが、基準が甘いといった反対意見が多く、否決されています。

新ルート:白玲5期(2025年6月の総会で可決)

3つ目が、今回西山さんが資格を得た新しいルートです。しんぶん赤旗(2025年6月8日)によると、2025年6月6日の日本将棋連盟の通常総会で、女流タイトル「白玲」を通算5期獲得し、「クイーン白玲」の資格を得た女流棋士に、棋士のフリークラスに編入する資格を与える規定が可決されました。編入するかどうかは、本人の選択が尊重されます。

西山さんは2026年10月10日、白玲戦でタイトルを防衛して通算5期目を獲得し、この規定の第1号となりました。西山さんは10月26日に権利の行使を表明し、2027年4月1日付で四段となり、順位戦に参加しないフリークラスに編入されます。女流棋士の資格も維持して、兼業します(ABEMA TIMES)。詳しくは、西山朋佳が女性初の棋士へで整理しています。

新しい規定ができた背景

なぜ、白玲5期で棋士になれるという新しい規定ができたのでしょうか。ここでは、報道で確認できる範囲で、その背景を整理します。

2025年6月の総会と、清水市代さんの初の女性会長就任

新しい規定が可決された2025年6月6日の日本将棋連盟の通常総会では、もう一つ大きな出来事がありました。しんぶん赤旗によると、この総会で選ばれた理事の互選により、清水市代女流七段が日本将棋連盟の会長に選ばれました。羽生善治会長の後任で、女性の会長就任は連盟の歴史で初めてです。

清水さんは、後で紹介するように、女流棋界の「3強」の一人として活躍し、1996年度には当時の女流タイトル4つを独占した、女流棋界の第一人者です。女流棋士出身の会長が誕生したのと同じ総会で、女流棋士が棋士になる新しいルートが可決されたことになります。共同通信によると、この規定には、女流棋戦のみの活躍で棋士になれることから賛否両論がありましたが、棋士や四段以上の女流棋士による投票で、過半数の賛成を得て可決されました。連盟は、女流棋士全体のレベルは年々上がっていて、最高峰の白玲戦で通算5期獲得すれば棋士としての実力は担保できると説明しています。

女流順位戦の創設で、全女流棋士の順位が見えるように

新しい規定の対象となった白玲戦は、比較的新しいタイトル戦です。All About ニュースによると、白玲戦は2026年で6期目を迎え、「女流順位戦」とも呼ばれています。女流棋士はA・B・C・Dの4つのクラスに分かれて対局し、A級の総当たり戦で最上位になった人が白玲に挑戦できます。七番勝負で争われ、賞金は4000万円と、女流タイトルの中で突出して高額です。

西山さんは、スポーツニッポンの一問一答で、「女流順位戦を創設していただいて、全女流棋士の現時点での順位が可視化できるようになった。その7番勝負でタイトルを獲れたことは光栄だし、身が引き締まる思い」と語っています。新規定についても、「白玲5期という新規定で、最高棋戦の評価をしていただいた。女流棋界を活性化する動きだった」と述べています。

なお、共同通信(2026年7月1日)によると、日本将棋連盟は2026年7月、白玲戦の女流順位戦にもとづく「女流棋士フリークラス制度」への移行も発表しています。これは女流棋士の引退規定に関する制度で、今回の「棋士のフリークラス」とは別のものです。

女流棋士50年の歩み

最後に、1974年の誕生から半世紀を超える女流棋士の歩みを、スポーツニッポンの記事をもとに振り返ります。

蛸島彰子さん(初代女流名人)、林葉直子さん・中井広恵さん・清水市代さんの「3強」時代

1974年、女流棋士の誕生とともに、初のタイトル戦である女流名人戦が創設されました。1期生の6人で初代の座が争われ、獲得したのは蛸島彰子女流六段です。蛸島さんは、棋士養成機関の奨励会に初めて入会した女性でもあり、初段まで昇段していました。

1981年度には、林葉直子元女流五段が14歳3カ月で、蛸島さんから女流王将のタイトルを奪いました。その後、林葉さん、中井広恵女流六段、清水市代女流七段の「3強」が競い合う時代が続きます。1996年度には、清水さんが当時の女流タイトル4つをすべて独占しました。

2008年度には、福間香奈さん(当時は里見香奈)が16歳8カ月で初タイトルの倉敷藤花を獲得しています。そして2026年、白玲戦で福間さんと西山さんが争い、西山さんが女性初の棋士の資格をつかみました。

1993年、中井さんが女流で初めて棋士に勝利

女流棋士と棋士の実力差を示す出来事として、スポーツニッポンは1993年の中井広恵さんの勝利を紹介しています。1993年、中井さんは女流棋士として初めて棋士を破りました。ただし、それは棋士との対局で通算39局目にしてようやくつかんだ初勝利であり、男女の実力差は依然として大きかったとされています。

それから30年あまりがたち、女流棋士が棋士との公式戦で勝利を重ね、編入試験の受験資格を得るまでになりました。西山さんの資格獲得は、こうした半世紀にわたる女流棋士たちの歩みの上にあるといえます。スポーツニッポンは、今回の出来事を「半世紀を超える女流棋界の夢をかなえた」と表現しています。

まとめ

将棋の世界では、「棋士」と「女流棋士」は別の制度です。棋士は奨励会の三段リーグを勝ち抜いて四段になるのが原則で、男女を問わずなれますが、これまで女性で棋士になった人はいませんでした。女流棋士は1974年に誕生した、女性のみがなれる制度です。

女性が棋士になるルートには、三段リーグ、棋士編入試験、そして2025年6月に新設された「白玲5期」の3つがあります。西山朋佳さんは、三段リーグであと一歩に迫り、編入試験でも合格まであと1勝という場面を経験したうえで、新しいルートの第1号として資格を獲得し、10月26日に権利の行使を表明しました。2027年4月1日に、女性初の棋士が誕生します。

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参考・出典