アジア大会

アジア大会の陸上がメダルラッシュ|三浦龍司が28年ぶりの金、飯澤千翔は40年ぶり、17歳の後藤大樹が銀 9月28日の結果まとめ


名古屋を中心に開かれているアジア大会の陸上競技で、9月28日は日本勢のメダルが相次ぎました。男子3000m障害では三浦龍司選手が金、青木涼真選手が銀でワンツーフィニッシュ。男子1500mでは飯澤千翔選手が40年ぶりの金メダルを手にし、17歳の高校生・後藤大樹選手は男子400mハードルで銀メダルを獲得しました。

さらに女子5000mでは田中希実選手が銀メダルを獲得し、出場した3種目すべてでメダルを手にしています。女子4×100mリレーも12年ぶりの銅メダルでした。テレビのハイライトだけでは追いきれなかった方のために、この日の結果を種目ごとに整理し、「何年ぶり」の中身や29日の注目種目までまとめます。前日27日の女子やり投げで北口榛花選手が銀メダルだった試合は「北口榛花が涙の銀メダル|「彼女を一人旅させてしまった」62m70で敗れた理由と、2週間前の日本記録との違い」で、28日終了時点の日本全体のメダル数は「アジア大会の日本のメダル数は172個|9月28日までの金銀銅と、過去の大会との比較」でまとめています。

男子3000m障害は三浦龍司が金、青木涼真が銀

8分17秒36の大会新記録で、日本勢28年ぶりの金

男子3000m障害の決勝は、三浦龍司選手(SUBARU)がスタートから先頭に立ち、そのまま逃げ切って優勝しました。記録は8分17秒36の大会新記録です(日本陸連の公式リザルト、TBS NEWS DIG、NHKによる)。なお、月刊陸上競技(月陸Online)は「8分17秒34」と書いていますが、日本陸連の公式リザルトは8分17秒36です。1000mを2分43秒、2000mを5分30秒で通過し、雨で湿度の高いタフなコンディションの中、最後までトップを譲りませんでした。

三浦選手は、2021年東京五輪7位、2023年ブダペスト世界陸上6位、2024年パリ五輪8位、2025年東京世界陸上8位と、世界大会で入賞を重ねてきた日本の障害のエースですが、アジア大会の金メダルはこれが初めてです。レース後は「初めてアジアのタイトルを取れて、すごくうれしいです」と話しました(月刊陸上競技による)。日本勢のこの種目での金メダルは28年ぶりです。

2位には青木涼真選手(Honda)が入りました。記録は8分17秒60で、日本選手権でマークした日本歴代2位の自己ベスト(8分18秒63)を更新しての銀メダルです。青木選手は前回の杭州大会に続く2大会連続の銀メダルとなりました。3位はカタールのザカリア・エルハラーミ選手(8分18秒13)でした(TBS NEWS DIG、月刊陸上競技による)。

日本勢のワンツーは1970年バンコク大会以来56年ぶり

日本勢が男子3000m障害で金・銀を独占したのは、1970年バンコク大会の三浦信由選手、野呂進選手以来、56年ぶりです(月刊陸上競技による)。半世紀以上ぶりのワンツーは、日本の中長距離の層の厚さを示す結果といえます。

では「28年ぶりの金」の28年前とは、どの大会なのでしょうか。1998年に開かれたバンコク大会で、男子3000m障害を制したのが日本の内冨恭則選手です。英語版Wikipediaの大会記録では、優勝記録は8分41秒00とされています。内冨選手は日本選手権でもこの種目を3度制しており、日本陸連の歴代優勝者一覧に名前が残っています(報道では「内富恭則」と書かれることもあります)。

つまり、日本勢の3000m障害の金メダルは、1998年バンコク大会の内冨選手以来ということになります。奇しくも、28年前の金も56年前のワンツーも、どちらもタイのバンコクでの出来事でした。そして今回、日本開催の大会でその記録が塗り替えられたことになります。

男子1500mは飯澤千翔が40年ぶりの金、森凪也が銅

大会新記録の3分36秒35

男子1500mの決勝では、飯澤千翔選手(住友電工)が3分36秒35で優勝しました。月刊陸上競技によると、大会新記録が出たのは16年ぶりです。レースは大集団のままラスト1周に入り、インドのガルバール・シン選手が抜け出しにかかったところにぴたりとつき、最後の直線で一気に逆転しました。飯澤選手は「もちろんうれしいですし、すごくホッとしています」と話しています。

同じレースでは、序盤にレースを引っ張った森凪也選手(Honda)が3分37秒92で銅メダルを獲得しました(日本陸連の公式リザルトによる)。日本勢2人がこの種目で表彰台に上がるのは、1966年バンコク大会以来60年ぶりです(月刊陸上競技、THE DIGESTによる)。

1986年ソウル大会の大志田秀次以来

日本勢の男子1500mでの金メダルは、1986年ソウル大会の大志田秀次選手以来、40年ぶりです(月刊陸上競技、TBS NEWS DIGによる)。飯澤選手は「ずっと止まっていた男子1500mの時計の針を少しずつ進められました」と話しています。28日は3000m障害の「28年ぶり」と1500mの「40年ぶり」が同じ日に重なりました。中長距離で長く途切れていた日本の金メダルが、一日で2つ戻ってきた形です。

17歳の後藤大樹が男子400mハードルで銀

日本歴代2位タイの47秒93、日本記録まであと0秒04

男子400mハードルの決勝では、17歳の後藤大樹選手(洛南高)が47秒93で銀メダルを獲得しました。日本陸連の公式リザルトも47秒93で、日本歴代2位タイ(2006年の成迫健児選手と並ぶ記録)、U20日本新記録です。月刊陸上競技によると、U20世界歴代でも3位に浮上しました。

優勝はカタールのバシーム・ヘメイダ選手で、記録は47秒82でした。後藤選手はトップで最後の直線に入りましたが、最後のハードルを越えてから逆転され、差はわずか0秒11でした。後藤選手の記録は、為末大さんが2001年のエドモントン世界選手権で出した日本記録(47秒89)にあと0秒04に迫るもので、日本人で47秒台を出したのは4人目です。来年の北京世界選手権の参加標準記録(48秒00)も突破しました(月刊陸上競技、スポニチアネックスによる)。

後藤選手はレース後、「自己ベストが出てとてもうれしい気持ちです」と話す一方で、「自分の得意な後半で負けてしまって、やっぱり悔しい気持ちが自分の中にあります」と振り返りました。「47秒台を出しても負けるのかという気持ちがあります。やっぱり大人の世界は広い」とも話し、「この悔しさを返せるのは来年の世界陸上なので」と前を向いています(月刊陸上競技による)。同じ決勝に出場した黒川和樹選手(住友電工)は49秒41で6位でした。

洛南高校の高校生

後藤選手は京都の洛南高校に通う高校2年生で、2009年5月5日生まれ、身長1m80です(スポニチアネックスによる)。出身は千葉県で、四街道北中学時代には全中(全日本中学校選手権)の110mハードルで優勝しています。高校では400mハードルに取り組み、1年生だった昨年のインターハイでは49秒84で優勝しました。1年生で50秒を切ったのは初めてのことでした。今年8月にアメリカで行われたU20世界選手権でも銀メダルを獲得しています。

2026年シーズンの記録の伸びは、次のとおりです。

  • 静岡国際:50秒42
  • 木南記念:49秒34
  • U20アジア選手権:49秒25
  • 日本選手権:48秒09で優勝(高校生として初の優勝、高校新記録)
  • アジア大会:47秒93で銀メダル

日本選手権の48秒09は、日本歴代4位、U20世界歴代4位、U18の世界最高記録、高校記録にあたると月陸は伝えています。為末大さんが1996年に出した高校記録(49秒09)を、30年ぶりに塗り替えました。そこからわずか数か月で、さらに0秒16縮めたことになります。高校生の伸び盛りの成長曲線がそのまま記録に表れており、今後の日本記録更新にも注目が集まります。

女子5000mの田中希実が銀、女子4×100mリレーは12年ぶりの銅

田中希実は今大会3個目のメダル

女子5000mの決勝では、田中希実選手(豊田自動織機)が15分11秒65で銀メダルを獲得しました。優勝はバーレーンのウィンフレッド・ヤヴィ選手で、記録は15分10秒18でした。ヤヴィ選手は、10000mと3000m障害に続いて今大会3冠です。田中選手はラスト1周でヤヴィ選手と同時にスパートしましたが、残り200mから引き離されました。3位はインドのパルル・チャウダリ選手(15分14秒61)でした(月刊陸上競技による)。

田中選手は今大会、出場した3種目すべてでメダルを手にしました。内訳は次のとおりです。

  • 10000m:銀メダル(32分41秒54)
  • 1500m:銅メダル(4分06秒14)
  • 5000m:銀メダル(15分11秒65)

長い距離から短い距離までを走り分けながら、3種目すべてで表彰台に上がるのは簡単なことではありません。月陸の見出しによると、田中選手は3種目への挑戦について「チームで挑み、ぶつかった」と話しています。同じレースに出場した山本有真選手は15分17秒84で4位に入り、地元・愛知での入賞となりました。

女子4×100mリレーは12年ぶりの銅、男子は5位

女子4×100mリレーの決勝で、日本は日本歴代4位の43秒52で銅メダルを獲得しました。この種目での日本のメダルは、2014年仁川大会以来、3大会・12年ぶりです。走順は、青木益未選手、三浦愛華選手、壹岐あいこ選手、御家瀬緑選手で、予選と同じオーダーでした。優勝は中国(42秒96)、2位はタイ(43秒51)で、日本はタイに0秒01差で届かなかったものの、4位のインドを0秒05差で振り切りました(月刊陸上競技、THE DIGESTによる)。

一方、男子4×100mリレーは38秒57で5位でした。日本は多田修平選手、小室歩久斗選手、桐生祥秀選手、小池祐貴選手の走順で臨みましたが、中国と台湾が先行し、アンカーの小池選手は終盤にタイの選手にかわされました。月刊陸上競技によると、日本がこの種目でメダルを逃したのは、予選で敗退した2010年広州大会以来4大会ぶりです。桐生選手は「メダルは最低限取ると思っていたし、金メダルを目指す中で、こういう結果になったというのは、もう一度選手も考えないといけない」と話しています(中日スポーツによる)。

29日の注目種目

女子800m決勝(久保凛、塩見綾乃)

29日は、女子800mの決勝に日本勢2人が出場します。日本記録保持者の久保凛選手(積水化学)は予選2組で4着でしたが、2分02秒87のタイムで拾われて決勝に進みました。サンケイスポーツによると、久保選手は予選後に「残り200メートルで抜かれたときに力んでしまってラストが思うように動かなかった」と振り返っています。

塩見綾乃選手は予選を2分02秒81の組1着で通過し、2大会連続の決勝進出を決めました。スポニチアネックスによると、女子800mで日本勢が金メダルを取れば、1974年テヘラン大会の河野信子さん以来52年ぶりになります。決勝は29日の19時50分に行われる予定です。

男子4×400mリレー決勝

男子4×400mリレーは、予選を3分03秒48の組1着で通過しました。予選のメンバーは、1走から佐藤風雅選手、白畑健太郎選手、今泉堅貴選手、林申雅選手です。日本はこの種目で2分58秒33のアジア記録を持っており、決勝での記録と順位に期待がかかります。

決勝の走順は当日の発表を確認してください。男子4×100mリレーが5位に終わったなかで、マイルリレーでメダルを取り戻せるかが大きな焦点です。

まとめ

9月28日のアジア大会陸上は、日本勢にとって歴史的な一日になりました。主なポイントは次のとおりです。

  • 男子3000m障害:三浦龍司選手が金、青木涼真選手が銀(日本勢の金は1998年の内冨恭則選手以来28年ぶり、ワンツーは56年ぶり)
  • 男子1500m:飯澤千翔選手が大会新の3分36秒35で金(1986年の大志田秀次選手以来40年ぶり)、森凪也選手が銅
  • 男子400mハードル:17歳の後藤大樹選手が日本歴代2位タイの47秒93で銀
  • 女子5000m:田中希実選手が銀で、出場3種目すべてでメダル
  • 女子4×100mリレー:12年ぶりの銅、男子4×100mリレーは5位

「何年ぶり」という言葉が並んだ一日でしたが、とくに17歳の後藤選手の成長は来年の北京世界選手権、そして2028年のロサンゼルス五輪へとつながる明るい話題です。29日の女子800mと男子4×400mリレーの結果もあわせてチェックしてみてください。


関連記事


参考・出典