愛知・名古屋アジア大会のバレーボール女子で、日本代表が韓国をストレートで下し、48年ぶりの金メダルに王手をかけました。一方で、試合を見ていて「石川真佑選手がいない」「秋本美空選手のポジションがいつもと違う」と感じた方も多いのではないでしょうか。
この記事では、石川真佑選手が出場していない理由を公式発表と報道で確認できる範囲で整理します。あわせて、秋本美空選手のミドルブロッカー起用の狙い、スタメン7人の顔ぶれ、イタリアでプレーする選手たちの所属クラブ、そしてチームを率いるアクバシュ監督の経歴までまとめました。22日の中国との決勝をより深く楽しむための予備知識としてお役立てください。決勝の日時や放送については、【バレー女子】アジア大会決勝は何時から?中国戦の放送・見どころと「48年ぶり金」の条件まとめで、アジア大会での日本の歴代成績は、【バレー女子】「48年ぶり」ってどういうこと?昔の日本はアジア大会5連覇していた!歴代成績と“東洋の魔女”の時代で整理しています。
アジア大会のバレー女子、主力が少ない?
大黒柱・石川真佑が不在というメンバー構成
今大会の女子日本代表で最も目立つ変化は、エースで主将の石川真佑選手がメンバーに入っていないことです。26歳の石川選手は、主将としてチームを引っ張ってきました。8月のアジア選手権では、ロサンゼルス五輪の出場権を逃して悔し涙を流しましたが、3位決定戦に勝って銅メダルを獲得しています。その石川選手がいないことに、違和感を覚えたファンは少なくありません。
大会前の報道でも、この不在は大きく取り上げられていました。東スポWEBは大会直前、若手アタッカーの北窓絢音選手(SAGA久光)への単独インタビューを掲載し、石川選手が不在の大会で「エース」として存在感を示す覚悟を伝えています。
選外となったのは石川真佑選手だけではありません。日本バレーボール協会は7月31日にアジア大会の代表を発表しましたが、愛知県出身の石川祐希選手・石川真佑選手の兄妹は、そろって選ばれませんでした。男子でも西田有志選手や高橋藍選手が選外となっています。地元・愛知出身の兄妹がそろって、地元開催の大会に出ない点にも、注目が集まっています。
【深掘り】石川真佑が出場しない理由は?
結論から言うと、報道からは、「ケガによる離脱」ではなく、代表強化の方針と新シーズンへの準備による選外と読み取れます。デイリースポーツは代表発表時に、五輪切符がかかったアジア選手権など主要国際大会での疲労を考慮したメンバー構成だったと報じています。
アジア選手権後の帰国会見を伝えたスポーツ報知の記事には、より具体的な記述があります。石川選手はアジア大会のメンバーに選ばれておらず、今季の代表活動はこれで終わりとなりました。今後は10月4日に開幕するトルコリーグの新天地に備えるとされています。移籍先はトルコの強豪エジザジュバシュです。石川選手はエジザジュバシュに合流するため、ひと足先にチームを離れたと伝えられています。
報じられている理由は、「主要大会の連戦による疲労への配慮」と「海外クラブでの新シーズンへの準備」の2点です。ケガによる離脱という発表はありません。本人は帰国会見で、新しい環境で刺激を受けながら成長し、その経験を来季の日本代表で生かしたいという趣旨の意気込みを語っています。
ネーションズリーグ・アジア選手権のメンバーとの違い
今シーズンの女子日本代表の歩みを振り返ると、今大会の位置づけがよく分かります。6〜7月のネーションズリーグ(VNL)は準々決勝で敗退しました。優勝すればロサンゼルス五輪出場が決まるアジア選手権でも、準決勝でタイに敗れて3位にとどまりました。
アジア選手権からの帰国時、アクバシュ監督は今大会の方針をはっきり示していました。監督は愛知・名古屋アジア大会について「若い選手がより責任を持って戦う大会になる」と述べ、メダル獲得を目標に掲げました。つまり、今回のメンバー構成は「主力を休ませ、若手に経験を積ませる」という意図に基づいていると見られます。
主将も交代しました。石川選手に代わってアジア大会でキャプテンを務めるのは、セッターの関菜々巳選手です。関選手はイタリアのクラブでプレーしています。今大会の登録メンバーは次の12人です(日本バレーボール協会の発表)。
- アウトサイドヒッター(OH):和田由紀子、佐藤淑乃、鴫原ひなた、廣田あい、北窓絢音、秋本美空
- セッター(S):関菜々巳、塩出仁美
- ミドルブロッカー(MB):山田二千華、山口真季、井上未唯奈
- リベロ(L):西崎愛菜
注目すべきは、秋本美空選手が登録上は「アウトサイドヒッター」でありながら、実際の試合ではミドルブロッカーとしてプレーしている点です。この起用法については後ほど詳しく解説します。
スタメン7人を一覧で紹介
和田由紀子・佐藤淑乃・関菜々巳(主将)・山田二千華・鴫原ひなた・秋本美空・西崎愛菜(リベロ)
準決勝の韓国戦で先発したのは、次の7人です。
- 関菜々巳(セッター・主将):イタリアのブスト・アルシーツィオ所属
- 和田由紀子(アウトサイドヒッター):韓国戦でチーム最多の15得点
- 佐藤淑乃(アウトサイドヒッター):今季からイタリアのヴェロ・バレー・ミラノに所属
- 鴫原ひなた(アウトサイドヒッター):アリーザ愛知所属
- 山田二千華(ミドルブロッカー):愛知県出身、NECレッドロケッツ川崎所属
- 秋本美空(ミドルブロッカー起用):チーム最年少・最長身で12得点
- 西崎愛菜(リベロ):守備の要
韓国戦は、和田選手がチーム最多の15得点、秋本選手が12得点でした。
予選から準決勝までの戦いぶり
今大会の日本は、予選ラウンドのグループAでネパール、インドネシアに2連勝して首位で通過し、準々決勝ではチャイニーズタイペイを3−0で下して準決勝へ進みました。
関選手、和田選手、秋本選手の3人は、イタリアの同じクラブに所属しており、日常的にボールを合わせられる環境にあります。
ただし、順調な試合ばかりではありませんでした。予選第2戦のインドネシア戦は3−1で勝ちましたが、第3セットを落とし、第4セットも25-23の接戦でした。
秋本美空ってどんな選手? なぜミドルブロッカーなの?
20歳、身長185cmでチーム最年少
秋本美空(あきもと・みく)選手は、今大会の日本代表で最も若い20歳で、最も背の高い185センチのアタッカーです。今大会の1次リーグ第2戦(インドネシア戦)では、ミドルブロッカーとして先発し、チーム最多の16得点を挙げました。
本職はアウトサイドヒッターなのに、今大会はミドルで起用
秋本選手はもともと、高さを生かした攻撃力が持ち味のアウトサイドヒッターで、代表の登録ポジションもOHのままです。それでも今大会は、ミドルブロッカーとして先発しています。
アウトサイドヒッターとミドルブロッカーでは、求められる役割が大きく異なります。アウトサイドはサーブレシーブにも参加し、コートの両サイドから強打を打ち込むのが主な仕事です。これに対してミドルブロッカーは、ネット中央でのブロックと、セッターのすぐ近くから素早く打つ「速攻(クイック)」が中心となります。
【深掘り】アクバシュ監督が「高校時代のプレー」を見て決めたコンバート
東スポWEBの報道によると、このコンバートはアクバシュ監督が秋本選手の高校時代のプレーを見て決めたものです。背景には、今季の成績があります。ネーションズリーグは8強止まり、アジア選手権は3位に終わり、ロサンゼルス五輪への最短ルートを逃しました。チームを作り直す中で、監督が高さのあるミドルとして秋本選手に目をつけたと考えられます。
秋本選手は中学時代に、オポジットを中心に、ミドルブロッカーやセッターも経験しています。2023年のU19世界選手権では大会最多得点を記録し、共栄学園高校のエースとして臨んだ2025年1月の春高バレーでは、チームを19年ぶりの優勝に導いて最優秀選手賞を受賞しました。こうした経歴が、ミドル起用の判断材料になったと考えられます。
本人が語った「上位チームに勝つための、もっと違うバレー」とは
秋本選手は準決勝後、コンバートの狙いについて、良い結果が出なかった中で「順位が下のチームに勝つのは当たり前だが、上のチームに対してもっと違うバレーをしたい」という話が監督からあったと明かしています。世界ランキング上位国に勝つには、これまでと同じ戦い方では足りないという問題意識です。
ミドルとしての手応えも口にしています。秋本選手は、相手ブロックがタイミングを取りにくいため速攻で得点が増えると語りました。守備面では、自分がチームで一番背が高い分、ブロックでもっとメリットを出したいと話しています。185cmの高さに、アウトサイドとして身につけた打力が加わることで、相手にとって読みにくい攻撃が生まれます。一方で本人は「ちょくちょくミスが出た」とも振り返っており、決勝ではミスの少なさも鍵になりそうです。
家族や経歴は?
秋本選手の母親は、元女子日本代表の大友愛さんです。大友さんは2012年ロンドン五輪で銅メダルを獲得した日本代表メンバーで、秋本選手は高校2年生だった2023年、16歳で日本代表の登録メンバーに選ばれました。
プロ入り後の経歴は次のとおりです。
- 2025年:SVリーグ女子のヴィクトリーナ姫路に入団
- 2025-26シーズン:ドイツ1部・ドレスナーSCに期限付き移籍
- 2026-27シーズン:イタリア・セリエAのブストアルシツィオに期限付き移籍
ドイツ、イタリアと、2シーズン続けて海外のクラブに挑戦しています。
和田由紀子と秋本美空は同じイタリアのチームに所属
ブストアルシツィオってどんなクラブ?
試合の記事でよく見かける「ブストアルシツィオ」は、イタリア女子1部リーグ(セリエA)のクラブです。日本のメディアでは、「ブスト・アルシーツィオ」「UYBA」などと表記されることもあります。
このクラブには現在、日本代表選手が3人在籍しています。関菜々巳選手、和田由紀子選手、そして秋本選手です。つまり、今大会の日本のスタメンのうち、セッター・関選手、アタッカー・和田選手、ミドル起用の秋本選手の3人が、同じクラブのチームメイトということです。
和田選手の経歴も簡単に紹介しておきます。和田選手は京都橘高校を卒業後、2020年にJTマーヴェラスに入団しました。4シーズン在籍したのち、2024年にNECレッドロケッツ川崎へ移籍し、2026年からイタリアで挑戦しています。
【深掘り】日本女子の「海外組」はいま何人いる?
日本女子バレーでは、近年海外でプレーする選手が急増しています。今大会の主力と石川選手に絞って、2026-27シーズンの所属先を整理すると次のようになります。
- 石川真佑:エジザジュバシュ(トルコ)
- 関菜々巳・和田由紀子・秋本美空:ブストアルシツィオ(イタリア)
- 佐藤淑乃:ヴェロ・バレー・ミラノ(イタリア)
佐藤選手は2026年3月、2シーズン在籍したNECレッドロケッツ川崎を退団し、同日にセリエAのヴェロ・バレー・ミラノへの移籍が発表されました。これにより、今大会のスタメン7人のうち4人(関・和田・佐藤・秋本)が海外クラブ所属という構成になっています。代表全体の海外組の正確な人数については、日本バレーボール協会などによる公式の集計は見当たらず、現時点では確認できていません。
海外組が増える意義は、世界トップレベルの高さやパワーを日常的に経験できることにあります。国内リーグではなかなか体験できない高いブロックや強烈なサーブを毎週のように受けることで、国際大会でも動じない力が身につきます。今大会で若いチームが落ち着いて戦えている背景には、こうした経験の蓄積もあると考えられます。
山田二千華は地元・愛知出身
名前の読み方と経歴
「二千華」は「にちか」と読みます。山田二千華選手は2000年2月24日生まれ、愛知県出身で、身長184cmのミドルブロッカーです。愛称は「ハナ」「ニチカ」、出身高校は豊橋中央高校です。
高校卒業後の2018年にNECレッドロケッツ(現・NECレッドロケッツ川崎)に入団しました。2021年の東京五輪、2024年のパリ五輪に出場しています。
地元開催の大会で
地元・愛知県出身の山田選手にとって、今大会は地元開催の大会です。準決勝の韓国戦では、第1セットで山田選手のサービスエースが飛び出し、最大4点差をつけられた第2セットでも、和田選手とともに逆転に貢献しました。
アクバシュ監督ってどんな人? チームをどう作り変えているのか
女子日本代表を率いるのは、トルコ出身のフェルハト・アクバシュ監督です。トルコのクラブでアシスタントコーチなどを務めたほか、ルーマニアのクラブでは監督を務めた経歴があり、女子日本代表では初の外国人監督です。2017年には、当時の中田久美監督のもとで、女子日本代表のコーチに就任していました。
指導者としてのキャリアは、アナリストから始まっています。トルコのガラタサライ(2004〜2006年)やテュルクテレコム(2006〜2009年)でアナリストを務めました。
アクバシュ監督の就任は、女子日本代表が大きな転換期を迎えたタイミングでした。前任の眞鍋政義監督が率いたチームは、2024年のパリ五輪で予選リーグ敗退に終わっていました。アクバシュ監督はその再建を託され、2028年ロサンゼルス五輪でのメダル獲得を目標に掲げています。
今大会の采配から、筆者は次の2点が特徴だと見ています(筆者の見方です)。一つ目は、ポジションにとらわれない起用で、秋本選手のミドル転向はその象徴です。二つ目は、若手に責任を持たせる姿勢で、石川選手ら主力を外し、関選手を主将に据えています。
まとめ
愛知・名古屋アジア大会の女子日本代表に石川真佑選手がいなかったのは、報道によれば、主要大会の連戦による疲労への配慮と、トルコの新天地エジザジュバシュでのシーズン準備によるものです。その代わりに、関菜々巳選手が主将を務め、若手が責任を持って戦う「新しい日本代表」が姿を見せています。
最大の注目は、本職のアウトサイドヒッターからミドルブロッカーにコンバートされた20歳の秋本美空選手です。アクバシュ監督が高校時代のプレーを見て決めたこの起用は、「上位国に勝つための違うバレー」を目指す試みでもあります。さらに、スタメンのうち4人がイタリアのクラブ所属という点や、地元愛知県出身の山田二千華選手の経験も、若いチームの支えになっていそうです。
48年ぶりの金メダルをかけた中国との決勝は、9月22日(火・休日)19時20分から行われます。ロサンゼルス五輪に向けた再出発の大会で、新しい顔ぶれがどこまで戦えるのか。石川選手の不在を補う選手たちの成長にも注目しながら、決勝を見届けてみてはいかがでしょうか。
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参考・出典
- バレーボール 石川兄妹が愛知・名古屋アジア大会代表入りせず 男子は高橋藍、西田有志ら主力メンバー外(デイリースポーツ)
- 【バレー女子】石川真佑は謝罪「申し訳ない」アジア選手権V逸でロサンゼルス五輪の最速切符ならず 帰国会見(スポーツ報知)
- バレー日本女子、石川真佑「申し訳ない」 アジア選手権から帰国(日本経済新聞)
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- 秋本美空(Wikipedia)
- 和田由紀子(Wikipedia)
- 佐藤淑乃(Wikipedia)
- 山田二千華(Wikipedia)
- 石川真佑(Wikipedia)
- フェルハト・アクバシュ(Wikipedia)