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北口榛花の復活の1年|右ひじのけがで東京世界陸上は予選落ち、ゼレズニー・コーチとフォームを一から作り直すまで


愛知・名古屋アジア大会の女子やり投げで銀メダルを獲得した北口榛花選手(JAL)。試合後の涙のコメントで「ケガで思うような結果を残せなくて不安がいっぱいでした」と、この1年を振り返りました。「北口選手はどんなけがをしていたの?」「新しいコーチは誰?」「どうやって日本記録を出すまで復活したの?」と気になった方も多いのではないでしょうか。

この記事では、2025年に右ひじのけがで東京世界陸上を予選落ちしたところから、男子やり投げの世界記録保持者ヤン・ゼレズニー氏をコーチに迎え、フォームを一から作り直し、2026年9月に日本新記録で「世界一」に返り咲くまでの1年を、時系列で整理します。アジア大会の銀メダルのあとに語った次の目標や、今後の主な大会の日程も紹介します。

昨年は右ひじのけがで苦しんだ

2025年の東京世界陸上は予選落ち

北口選手は、2023年のブダペスト世界陸上で金メダル、2024年のパリ五輪でも金メダルを獲得し、女子やり投げの世界の頂点に立っていました(日本語版Wikipediaによる)。2025年9月に東京で開かれた世界陸上では、大会連覇と自国開催での金メダルが期待されていました。

しかし、2025年のシーズンは、けがとの戦いになりました。テレ東スポーツによると、北口選手は2025年6月、シーズン中に右ひじを痛め、「右肘内側上顆炎」と診断されて、7月の日本選手権を欠場しています。8月中旬に復帰しましたが、日本語版Wikipediaによると、復帰戦となった8月20日のダイヤモンドリーグ・ローザンヌ大会では「手が空中で止まった」と話し、50m93で最下位でした。その後は練習を制限しながら世界陸上を目指しました。月刊陸上競技も、北口選手が昨年は右ひじの故障で後半シーズンを満足に過ごせず、練習もままならなかったと伝えています。

万全ではない状態で臨んだ東京世界陸上では、2025年9月19日の予選で、北口選手は1投目60m31、2投目60m38、3投目58m80にとどまりました。テレ東スポーツによると、決勝進出ラインの62m50に届かず、A組8位(全体14位)で予選敗退となりました。前回女王でパリ五輪金メダリストが、自国開催の大会で決勝に進めないという、まさかの結果でした。

試合後、北口選手は涙を流しながら「後悔はないと言いたいですが『怪我しなかったらな』と考えてしまう」と話しています(テレ東スポーツによる)。一方で、「『また明日ね』と言えないのは残念ですが、すごくいい思い出になりました」と、声援を送った観客への感謝も口にしました。

自国開催の大舞台は、東京五輪(12位)も含め、けがが続いた

北口選手にとって、自国開催の大舞台でけがに苦しんだのは、2025年の東京世界陸上が初めてではありません。日本語版Wikipediaによると、2021年の東京五輪では、予選を62m06の6位で通過したものの、予選のあとから左脇腹に痛みが出て練習もままならず、痛みを押して出場した決勝は55m42で12位に終わっています。月刊陸上競技は、東京五輪、そして東京世界陸上と、自国開催の大舞台はいずれもけががあったと伝えています。

北口選手自身も、アジア大会の前に「戦える力はあるのに投げられない大会が続いていました」と振り返っています(月刊陸上競技による)。世界一の実力がありながら、日本のファンの前で本来の投げを見せられない大会が続いていたのです。だからこそ、2026年の愛知・名古屋アジア大会は、北口選手にとって「待ちに待った初出場の舞台」でもありました。

新しいコーチはヤン・ゼレズニー

男子やり投げの世界記録保持者、五輪3連覇のレジェンド

2025年の苦しいシーズンのあと、北口選手は大きな決断をしました。新しいコーチとして迎えたのが、チェコのヤン・ゼレズニー氏です。英語版Wikipediaなどによると、ゼレズニー氏のプロフィールは次のとおりです。

  • 生年月日:1966年6月16日(チェコ出身)
  • 五輪:1992年バルセロナ、1996年アトランタ、2000年シドニーで金メダル(五輪3連覇)
  • 世界選手権:1993年、1995年、2001年に優勝
  • 世界記録:男子やり投げ98m48(1996年)。現在も破られていない
  • 指導歴:女子やり投げの世界記録保持者バルボラ・シュポタコバ選手の元コーチ。男子やり投げのヴィーチェスラフ・ヴェセリー選手も指導

ゼレズニー氏は、男子やり投げの歴史で最も偉大な選手の一人とされる人物です。指導者としても、女子やり投げの世界記録(72m28)を持つシュポタコバ選手を指導した経験があります。

月刊陸上競技によると、北口選手は2026年1月、日本大学3年生の終わりからチェコで約7年間指導を受けてきたデイビッド・セケラック・コーチとの契約を終えました。日本経済新聞(共同通信)は1月20日、北口選手がコーチを変更し、ゼレズニー氏と協議を始めたと報じています。北口選手は「世界一を取れましたが、さらに成長したい」と、環境を変えることを決めたといいます。その後、2月に南アフリカで行われたゼレズニー氏のトレーニングキャンプに参加し、試用期間を経て、2026年5月1日に正式に契約したことが発表されました。

正式契約の発表の際、北口選手は「新たなスタートをレジェンドであるヤン・ゼレズニーさんとできてとてもうれしいです。やり投のことはもちろん、メンタリティも含めて吸収していきたいです」とコメントしています(月刊陸上競技による)。

助走とフォームを一から作り直した

ゼレズニー・コーチのもとで、北口選手は投げ方そのものを見直しました。月刊陸上競技によると、北口選手は投てきフォームを一から作り直しています。スポニチアネックスによると、今季はゼレズニー氏の指導のもと、やりを目線の位置で持ち続ける投法を取り入れ、試行錯誤を重ねてきました。

見直しの大きなポイントは、助走です。北口選手は、日本記録を出したときの投げについて「助走距離を下げて、自分の投げを完結するためのスペースを作りました。それが70%くらいできたからの日本記録」と説明しています(月刊陸上競技による)。助走の距離を短くすることで、最後に投げる動作をしっかりやり切れるだけの余裕を作るという考え方です。

北口選手は、夏場には強化合宿で自分を追い込んで準備を重ねました。新しい投げ方がまだ完成していない中でも、シーズンが進むにつれて結果が出始めます。日本語版Wikipediaによると、6月の日本選手権では62m86を投げて2年ぶり5度目の優勝を果たし、初めてのアジア大会代表に内定しました。月刊陸上競技によると、8月21日のダイヤモンドリーグ・ローザンヌ大会では、当時の今季世界4位となる64m90を投げ、1年2カ月ぶりにダイヤモンドリーグで優勝しています。前の年に最下位に終わった同じ大会での復活勝利でした。さらにスポーツ報知によると、9月5日のダイヤモンドリーグ・ファイナルでも、今季ベストの65m44で2位に入っています。

世界アルティメット選手権で日本新記録、優勝

68m92で、パリ五輪以来の「世界一」

新しい投げ方の成果が大きく表れたのが、2026年9月12日にハンガリー・ブダペストで行われた世界陸上アルティメット選手権です。この大会は、世界陸連が新しく始めた大会で、パリ五輪や世界選手権の王者など、世界のトップ選手だけが出場できます。

北口選手はこの大会で、68m92の日本新記録を投げて優勝しました。2023年に出した自身の日本記録67m38を、1m54も更新する一投でした(スポニチアネックスによる)。世界陸連と英語版Wikipediaによると、2位は中国の厳子怡選手の68m05で、差はわずか87cmでした。月刊陸上競技は、この優勝を、ライバルの厳選手との68mを超える激戦を制して、パリ五輪以来の「世界一」に舞い戻ったと伝えています。ライバルの厳選手については「厳子怡とは?北口榛花に勝った中国の18歳|アジア記録71m74、世界歴代2位のやり投げ選手のプロフィール」でまとめています。

右ひじのけがで東京世界陸上を予選落ちしてから、ちょうど1年ほど。新しいコーチのもとでフォームを作り直した北口選手は、自己ベストを更新しての優勝という最高の形で、世界の頂点に戻ってきました。スポニチアネックスによると、北口選手は「やっと胸を張って堂々と“帰ってきたよ”と言える結果を出せて良かった」と話しています。

「私もまだ世界と戦いたいという意思表示ができた」

アジア大会のあと、北口選手はこの1年を振り返って、言葉をつまらせ、涙を浮かべました。月刊陸上競技によると、北口選手は次のように語っています。

「ケガで思うような結果を残せなくて不安がいっぱいでした。でも、こうして日本記録を出せてアルティメットという舞台を勝てて、『私もまだ世界と戦いたいという意思表示』ができたと思います。無事にやりきれて安心しました」

世界一を2度経験した北口選手でも、けがで思うように投げられなかった1年間は、大きな不安を抱えていたことがわかります。アルティメット選手権での優勝は、記録や結果以上に、北口選手にとって「まだ世界と戦える」という自信を取り戻すきっかけになりました。

アジア大会の銀メダルと、次の目標

「必ず70mを投げられるように」

アルティメット選手権から約2週間後の9月27日、北口選手は名古屋市のパロマ瑞穂スタジアムで行われたアジア大会の女子やり投げ決勝に出場しました。結果は62m70で銀メダルでした。優勝は、1投目に大会新記録の70m46を投げた厳子怡選手でした。

北口選手は、この日は「助走で止まってしまうことが多かった」と話しています。その原因が疲労なのか、雨の影響なのか、悪いクセが出たのかは「まだ整理できていない」とのことです(月刊陸上競技による)。試合後は「彼女に一人旅させてしまった、勝負できなかったのが一番悔しい」と涙を見せました。6投の流れや記録が伸びなかった理由は「北口榛花が涙の銀メダル|「彼女を一人旅させてしまった」62m70で敗れた理由と、2週間前の日本記録との違い」で詳しく紹介しています。

それでも、北口選手はすでに次のシーズンを見据えています。月刊陸上競技によると、北口選手は次のように話しています。

「コーチからも、日本記録を出してもまだ伸びしろがあると言ってもらえていますし、あれをやってみたい、これをやってみたいとたくさん言ってくれる。自分もやりたいことがたくさんある。今年の冬季練習からコーチのメソッドでできる。必ず70mを投げられるように次のシーズンに向けて切り替えていきます」

ゼレズニー氏との正式契約は2026年5月で、今季はシーズン中に投げ方を作り直してきました。この冬は、初めてシーズンオフの練習から、コーチのメソッドで取り組むことができます。スポニチアネックスによると、北口選手は「自分も絶対に70メートルを投げられる力はあると思っているので、また来年、70メートルに向けて挑戦していきたいです」とも話しています。

今後の主な大会

北口選手にとって、今後の主な目標となる大会は次のとおりです。

  • 2027年 世界陸上(北京):2027年9月10日〜19日、中国・北京の国家体育場(英語版Wikipediaによる)。2025年東京大会に続き、2大会続けてのアジア開催
  • 2028年 ロサンゼルス五輪:2028年夏にアメリカ・ロサンゼルスで開催予定。北口選手にとっては、パリ五輪に続く2大会連続の金メダルがかかる大会

月刊陸上競技も、北口選手は北京世界選手権、ロサンゼルス五輪に向けて「まだまだ試行錯誤の途上」だと伝えています。北口選手はダイヤモンドリーグ・ファイナルの1投目(64m56)で、北京世界陸上の参加標準記録(63m40)を突破しています(スポーツ報知による)。ただし、来季の具体的な出場予定やスケジュールは、執筆時点では発表されていません。今季は、世界陸上アルティメット選手権とアジア大会で長いシーズンを締めくくりました。

日本の女子やり投げは強豪国に

武本紗栄の銅メダル、日本勢2人のメダル

アジア大会の女子やり投げでは、北口選手に続いて、武本紗栄選手(オリコ)も銅メダルを獲得しました。月刊陸上競技によると、武本選手は最終投てきの前は6位でしたが、最後の6投目で今季ベストの62m15を投げ、逆転で表彰台に上がりました。日本勢2人がそろってメダルを獲得したことになります。

北口選手は、武本選手と2人でメダルを獲得したことについて、「武本(紗栄)選手と2人でメダルを取れたのはすごく大きなこと。日本はやり投強豪国と言っていい。絶対に世界と戦えるように頑張りたいです」と語っています(月刊陸上競技による)。

東京世界陸上のときは「自分のことで目いっぱいで、何もできなかった」という北口選手ですが、今回は武本選手と2人でトラックを1周し、観客に感謝を伝えました。「みなさんにお礼はできたんじゃないかと思っています」と話しています(スポニチアネックスによる)。ライバルの厳子怡選手を含めて、北口選手は「アジアのやり投が強い時代の一員として幸せ」とも話しています。

まとめ

北口榛花選手の「復活の1年」を振り返ります。

  • 2025年6月に右ひじを痛め(右肘内側上顆炎)、7月の日本選手権を欠場。9月の東京世界陸上は60m38で予選敗退した。2021年の東京五輪(12位)を含め、自国開催の大舞台ではけがが続いていた
  • 2026年1月、約7年間指導を受けたセケラック・コーチとの契約を終え、男子やり投げの世界記録保持者で五輪3連覇のヤン・ゼレズニー氏と2026年5月に正式契約。助走とフォームを一から作り直した
  • 2026年9月12日の世界陸上アルティメット選手権で68m92の日本新記録を投げて優勝し、パリ五輪以来の「世界一」に返り咲いた
  • 9月27日のアジア大会では62m70で銀メダル。「必ず70mを投げられるように」と次のシーズンを見据え、2027年の北京世界陸上、2028年のロサンゼルス五輪へ向かう
  • アジア大会では武本紗栄選手も銅メダルを獲得し、日本勢2人がメダルを獲得した

けがで苦しんだ1年を乗り越え、再び世界の頂点に戻ってきた北口選手。新しいコーチのもとで迎える初めての冬を経て、来季どんな投げを見せてくれるのか、70mへの挑戦に注目しましょう。


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参考・出典