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厳子怡とは?北口榛花に勝った中国の18歳|アジア記録71m74、世界歴代2位のやり投げ選手のプロフィール


愛知・名古屋アジア大会の陸上女子やり投げで、2024年パリ五輪金メダリストの北口榛花選手を破って優勝したのが、中国の18歳・厳子怡(ゲン・シイ)選手です。1投目で投げた70m46は大会新記録で、北口選手の日本記録(68m92)を1m以上も上回りました。「厳子怡ってどんな選手?」「18歳でなぜそんなに投げられるの?」「北口選手とはどっちが強いの?」と気になった方も多いのではないでしょうか。

この記事では、厳子怡選手のプロフィールと、これまでに残してきた記録、北口選手との対戦成績を整理します。あわせて、女子やり投げの世界記録や歴代ランキングの中で、厳選手の記録がどのくらいすごいのかを、北口選手の日本記録と比べながら解説します。

厳子怡のプロフィール

読み方、年齢、出身

厳子怡選手の名前は、日本語では「ゲン・シイ」と読みます(スポニチアネックスによる)。中国語の読み方をアルファベットで表すと「Yan Ziyi」で、海外のメディアや世界陸連の記録ではこの表記が使われています。

英語版Wikipediaによると、厳子怡選手は2008年5月22日生まれで、2026年9月時点で18歳です。出身は中国・浙江省の寧波(ニンポー)です(月刊陸上競技も浙江省出身と紹介しています)。18歳の誕生日の翌日に、後で紹介する71m74の大記録を出しており、2026年は厳選手にとって飛躍の1年になりました。

月刊陸上競技によると、厳選手が陸上を始めたのは小学6年生のころで、最初は砲丸投げをしていました。やり投げに取り組み始めたのは中学生になってからです。

厳選手が国際的に注目され始めたのは、2024年です。英語版Wikipediaによると、2024年にペルーのリマで行われた世界U20選手権(20歳未満の世界大会)で、女子やり投げの金メダルを獲得しています。一方、2024年のパリ五輪と、2025年に東京で行われた世界陸上には、世界陸連が定める年齢の制限により出場できませんでした。

名前の表記(厳子怡・嚴子怡)

厳選手の名前は、日本のメディアによって漢字の表記が分かれています。月刊陸上競技やTBS NEWS DIGは「嚴子怡」、スポニチアネックス、デイリースポーツ、西スポWEB OTTO!などは「厳子怡」と書いています。

「嚴」は「厳」の旧字体で、同じ字です。中国の簡体字では「严」と書きます。どちらの表記でも同じ選手を指しているので、ニュースを検索するときは、両方の表記で探すと情報が見つけやすくなります。この記事では、新聞などで多く使われている「厳子怡」で統一します。

18歳で70m超え。これまでの記録

アジア記録71m74は世界歴代2位

厳選手の名前を世界に知らしめたのが、2026年5月23日に中国・厦門(アモイ)で行われたダイヤモンドリーグ厦門大会で投げた71m74です。月刊陸上競技によると、この記録は女子やり投げの世界歴代2位で、アジア記録であり、20歳未満の世界記録(U20世界記録)でもあります。

それまでの厳選手の自己ベストは、2025年に出した65m89(当時のU20世界記録)でした。71m74は、その自己ベストを一気に5m85も更新する記録です。世界記録の72m28とは、わずか54cm差でした。月刊陸上競技によると、この日の厳選手は肘への負担を考えて、1投目だけで試技を終えています。

英語版Wikipediaと月刊陸上競技によると、厳選手はU20世界記録を何度も更新してきました。

  • 2024年4月:64m28(15歳)
  • 2024年9月:64m41
  • 2025年3月:64m83
  • 2025年8月:65m89(中国選手権。足首をけがした状態で出場)
  • 2026年5月:71m74(アジア記録、世界歴代2位)

厳選手自身も、この記録には驚いていました。月刊陸上競技によると、厳選手は「70mを超えたとは思わなくて、67mから68mくらいだろうと思っていました。世界記録にも近い記録となり驚きました」と振り返っています。そのうえで、「自分とコーチの努力が無駄ではなかった。まだ課題もあるし、これからは世界記録よりも安定したパフォーマンスを維持していきたい」と語りました。

この言葉どおり、厳選手は2026年のダイヤモンドリーグで安定した成績を残しました。英語版Wikipediaによると、厦門大会のあと、オスロ(67m11)、パリ(67m44)、モナコ(68m75)でも優勝し、9月のダイヤモンドリーグ・ファイナル(ブリュッセル)でも68m42の大会新記録で優勝しています。

アジア大会の大会新記録70m46

9月27日のアジア大会女子やり投げ決勝で、厳選手は1投目に70m46を投げ、大会新記録で優勝しました。月刊陸上競技によると、この70m46は、女子やり投げのパフォーマンス(これまでに投げられたすべての記録)で世界歴代10位にあたります。

西スポWEB OTTO!によると、厳選手は1投目の70m46のあと、2投目以降の試技をパスしました。結果として、2位の北口選手(62m70)に7m76の大差をつけての優勝でした。

18歳の選手が、71m74に続いて2度目の70m超えを記録したことになります。英語版Wikipediaの歴代記録によると、今の規格のやりで70mを超えたことがある女子選手は、厳選手を含めて6人しかいません。厳選手が、世界のトップレベルで安定して70m前後を投げられる選手になりつつあることを示す結果でした。

北口榛花との対戦成績

世界アルティメット選手権では北口が勝利

厳選手と北口選手の対戦で、最も接戦になったのが、2026年9月12日にハンガリー・ブダペストで行われた世界陸上アルティメット選手権です。世界陸連と英語版Wikipediaによると、北口選手が68m92の日本新記録で優勝し、厳選手は68m05で2位でした。2人の差はわずか87cmです。厳選手は1投目の68m05でリードしていましたが、2投目のあとで競技をやめており、その後に北口選手が逆転しました。

月刊陸上競技は、この試合を「ライバルの嚴子怡との68mオーバーの激戦」と伝え、北口選手がパリ五輪以来の「世界一」に返り咲いたと報じています。世界陸連が新しく始めたこの大会は、世界のトップ選手だけが出場できる大会で、優勝賞金は15万ドル(約2300万円)でした。

これまでの直接対決

2026年9月に行われた3つの大会で、2人は続けて対戦しています。報道で確認できた結果は次のとおりです。

日付 大会 厳子怡 北口榛花 勝者
2026年9月5日(日本時間6日) ダイヤモンドリーグ・ファイナル(ブリュッセル) 1位 68m42(大会新) 2位 65m44 厳子怡
2026年9月12日 世界陸上アルティメット選手権(ブダペスト) 2位 68m05 1位 68m92(日本新) 北口榛花
2026年9月27日 アジア大会(名古屋) 1位 70m46(大会新) 2位 62m70 厳子怡

ダイヤモンドリーグ・ファイナルの結果は、スポーツ報知、月刊陸上競技、英語版Wikipediaによるものです。この試合では、北口選手が1投目の64m56で首位に立ちましたが、厳選手が5投目に68m42の大会新記録を投げて逆転しました。北口選手は最終6投目に今季ベストの65m44を投げましたが、届きませんでした。この3大会では、厳選手の2勝1敗となっています。

女子やり投げの世界記録と、歴代の上位

世界記録と歴代ランキング

女子やり投げの世界記録は、チェコのバルボラ・シュポタコバ選手が2008年9月13日にドイツ・シュツットガルトで投げた72m28です(英語版Wikipediaによる)。この記録は18年間破られていません。

英語版Wikipediaと月刊陸上競技の歴代記録をもとに、選手ごとの自己最高記録で上位を並べると、次のようになります。

順位 選手 国 記録 年
1 バルボラ・シュポタコバ チェコ 72m28(世界記録) 2008年
2 厳子怡 中国 71m74(アジア記録) 2026年
3 オスレイディス・メネンデス キューバ 71m70 2005年
4 マリア・アンドレイチク ポーランド 71m40 2021年
5 マリヤ・アバクモワ ロシア 70m53 2013年
6 クリスティーナ・オーバーグフェル ドイツ 70m20 2007年

歴代の上位には、五輪で2度金メダルを取ったシュポタコバ選手や、2004年アテネ五輪金メダリストのメネンデス選手といった名選手が並んでいます。厳選手は、18歳にして、こうしたレジェンドたちを上回る記録を持っていることになります。なお、記録の数え方(選手ごとの最高記録か、投てきごとの記録か)によって順位の表し方が変わります。月刊陸上競技がアジア大会の70m46を「世界歴代10位」としているのは、投てきごとの記録で数えた場合の順位です。

北口の日本記録68m92との比較

北口選手の日本記録は、2026年9月12日の世界陸上アルティメット選手権で出した68m92です。北口選手がけがを乗り越えてこの記録を出すまでの歩みは「北口榛花の復活の1年|右ひじのけがで東京世界陸上は予選落ち、ゼレズニー・コーチとフォームを一から作り直すまで」で紹介しています。北口選手は、2023年に出した自身の日本記録67m38を3年ぶりに更新しました。世界陸連によると、この68m92で北口選手は、選手ごとの歴代ランキングで10位タイに入っています。

厳選手の自己ベスト71m74と比べると、その差は2m82あります。また、アジア大会で厳選手が投げた70m46と比べても、1m54の差があります。一方で、アルティメット選手権では、北口選手が厳選手に87cm差で勝っており、2人の力関係は、その日の調子や条件によって入れ替わるといえます。

北口選手は、アジア大会のあと「必ず70mを投げられるように次のシーズンに向けて切り替えていきます」と話しています(月刊陸上競技による)。アジア大会での北口選手の6投の流れや、記録が伸びなかった理由は「北口榛花が涙の銀メダル|「彼女を一人旅させてしまった」62m70で敗れた理由と、2週間前の日本記録との違い」で詳しく紹介しています。70mは、北口選手にとって、厳選手と同じ土俵で戦うための次の目標といえます。

北口「彼女がいるから高みを目指せる」

「アジアのやり投げが強い時代の一員として幸せ」

アジア大会で敗れた北口選手は、厳選手について前向きな言葉を残しています。月刊陸上競技によると、北口選手は「彼女がいるから高みを目指そうという気持ちが自然と湧いてくる。アジアのやり投が強い時代の一員として幸せ」と語りました。

表彰式では、テレビで共演した卓球の石川佳純さんから教わった中国語の「ゴンシー(恭喜=おめでとう)」で、厳選手を祝福しました。北口選手は「やっと使えました!」と笑顔を見せています。また、表彰式の裏では、男子ハンマー投げの室伏広治さんから「良いライバルができたことはプラスだよ」と声をかけられたといいます(月刊陸上競技による)。

北口選手は「彼女とまったく同じ投げはできないですが、必ず良い投てき、良い選手にはヒントがある」と話し、厳選手の投てきの動画をじっくり見ていたそうです。日本と中国の2人が、世界のトップで競い合う時代が始まっています。

まとめ

厳子怡選手について、ポイントを整理します。

  • 厳子怡(ゲン・シイ、Yan Ziyi)選手は、2008年5月22日生まれ、中国・寧波出身の18歳。2024年の世界U20選手権で優勝した。表記は「厳子怡」「嚴子怡」の両方が使われている
  • 2026年5月23日のダイヤモンドリーグ厦門大会で、世界歴代2位・アジア記録の71m74を投げた。世界記録(72m28)との差は54cm
  • アジア大会では1投目に大会新記録の70m46を投げ、北口榛花選手に大差をつけて優勝した
  • 2026年9月の北口選手との対戦は、ダイヤモンドリーグ・ファイナルとアジア大会で厳選手が勝ち、世界陸上アルティメット選手権では北口選手が勝った
  • 北口選手は「彼女がいるから高みを目指せる」と語り、70mを次の目標に掲げている

18歳にして世界記録に迫る記録を持つ厳選手と、パリ五輪金メダリストの北口選手。アジアの2人が競い合う女子やり投げは、これからの国際大会でますます注目を集めそうです。2人の次の対決にも注目しましょう。


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参考・出典