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アジア大会

松島輝空とは?19歳で世界ランク3位、張本智和との「ダブルエース」が中国を破るまで


愛知・名古屋アジア大会の卓球男子団体決勝で、日本が中国を3-2で破り、60年ぶりの金メダルを獲得しました。最後の第5試合を勝ちきって優勝を決めたのが、19歳の松島輝空(まつしま・そら)選手です。「張本智和は知っているけれど、松島輝空は初めて聞いた」という方も多いのではないでしょうか。

松島選手は、ここ1年あまりで一気に世界のトップ選手へ駆け上がった若手のエースです。この記事では、松島選手のプロフィールと急成長の歩み、張本智和選手との関係を解説します。あわせて、中国メディアが日本をどう評価したのか、中国卓球が抱える事情、2028年ロサンゼルス五輪に向けた日本男子卓球の展望も整理します。

松島輝空ってどんな選手?

プロフィール(年齢、出身、所属、プレースタイル)

松島輝空選手は2007年4月29日生まれの19歳で、京都府の出身です。日本卓球協会の公式プロフィールによると、戦型は「左シェーク攻撃型」、つまり左利きでシェークハンドのラケットを使う攻撃型の選手です。英語版ウィキペディアによると、身長は172cmです。2026年1月の全日本選手権には「木下グループ・神奈川」の所属で出場しましたが、日本卓球協会のプロフィールでは、現在の所属は「個人」となっています。日本語版ウィキペディアによると、国内のTリーグでは2020年から木下マイスター東京でプレーし、2026年からは岡山リベッツに所属しています。

松島選手は、いわゆる「卓球一家」の出身として知られています。日本語版ウィキペディアによると、母方の曽祖父は元日本代表監督の田阪常雄さん、大叔父は世界選手権の男子ダブルスで銀メダルを獲得した田阪登紀夫さんです。幼いころから卓球に親しみ、全日本選手権のバンビの部(小学2年生以下)やカブの部(小学4年生以下)、ホープスの部(小学6年生以下)で優勝しています。

ジュニア時代から、世界の舞台でも結果を残しています。2021年の世界ユース選手権では、U15の男子シングルス、男子ダブルス、混合ダブルスの3種目を制覇しました。男子ダブルスのパートナーはフランスのフェリックス・ルブラン選手、混合ダブルスのパートナーは張本美和選手でした。

プレースタイルについて、卓球王国PLUSは2026年の全日本選手権優勝を振り返り、松島選手を「セオリーにとらわれない大胆不敵なプレーと、王者のメンタリティ」と評しています。

「昨春以降に急成長」、世界ランク3位になるまで

日刊スポーツは、松島選手を「昨春以降に急成長」した選手と表現しています。飛躍のきっかけとなったのは、2025年1月の全日本選手権です。準決勝で張本智和選手を破り、決勝では篠塚大登選手に勝って、17歳で男子シングルス初優勝を果たしました。

その後も勢いは止まりません。2025年にはWTTコンテンダー太原で優勝し、11月には格上の大会であるWTTチャンピオンズ・モンペリエで準優勝、続くWTTチャンピオンズ・フランクフルトでは地元ドイツのダン・チウ選手を破って優勝しました(英語版ウィキペディア)。この年の間に、世界ランクも1桁台に上がっています(日刊スポーツ)。

2026年に入ると、さらに実績を積み上げました。1月の全日本選手権では、準決勝で再び張本選手との激闘を制し、決勝で篠塚選手を4-0で下して2連覇を達成しています(日本卓球協会)。春のITTF男子ワールドカップ(マカオ)では、準々決勝でスウェーデンのモーレゴード選手を4-0、準決勝では過去6戦全敗だったチャイニーズタイペイの林昀儒選手を4-3で破り、決勝に進みました。決勝では世界王者の王楚欽選手に3-4で敗れましたが、銀メダルを獲得しています(テレ東卓球NEWS)。日本男子がワールドカップの決勝に進んだのは、2019年の張本選手以来2人目でした。

英語版ウィキペディアによると、2026年8月に自己最高の世界ランク3位となり、アジア大会の時点でも3位です。現在の世界ランクのトップ10の中で、最も若い男子選手でもあります。主な戦績を整理すると、次のとおりです。

  • 2021年:世界ユース選手権 U15で3冠(男子シングルス、男子ダブルス、混合ダブルス)
  • 2025年1月:全日本選手権 男子シングルス初優勝
  • 2025年11月:WTTチャンピオンズ・フランクフルト優勝
  • 2026年1月:全日本選手権 男子シングルス2連覇
  • 2026年春:ITTF男子ワールドカップ(マカオ)準優勝
  • 2026年5月:世界選手権団体戦(ロンドン)銀メダル
  • 2026年9月:アジア大会 男子団体金メダル

張本智和との関係

張本の「松島君の台頭が日本全体に良い影響を与えてくれた」

日本男子卓球は長年、張本智和選手(23、トヨタ自動車)がエースとして引っ張ってきました。張本選手は10代のころから世界のトップで戦い、日本男子の中心であり続けています。そこに松島選手が加わったことで、日本は「ダブルエース」と呼べる体制になりました。

アジア大会の団体優勝後、張本選手は日刊スポーツの取材に「松島君の台頭が僕自身に、日本全体にも良い影響を与えてくれた」と語りました。国内では、全日本選手権で2年続けて松島選手が張本選手を破るなど、2人は激しいライバル関係にあります。日刊スポーツの大会前の取材では、張本選手は松島選手を足の速い「野良犬」に例え、「悔しい気持ち、おめでとうの気持ち、感謝の気持ちの3つがある」と語っていました。

アジア大会の決勝では、2人の信頼関係もうかがえました(決勝の流れは「卓球男子団体が中国に勝った決勝を1試合ずつ解説|張本智和「勝つから待っとけ」と60年ぶり金の舞台裏」で詳しく解説しています)。1勝2敗で迎えた第4試合の前、張本選手は松島選手に「勝つから待っとけ」と声をかけました。張本選手は言葉どおり王楚欽選手にストレート勝ちし、第1試合で逆転負けしていた松島選手も第5試合で勝って、日本の優勝を決めています。ライバルでありながら、団体戦では互いを信じて戦える関係が、日本の強さの土台になっています。

松島が2番手にいるから、戸上を3番手に置ける層の厚さ

張本選手は、チーム全体の底上げについてもこう話しています。「戸上君を3番におけるのも、松島くんの強さのおかげ」。卓球の団体戦は3人がシングルスを最大5試合行い、先に3勝したチームが勝ちます。エース2人がそれぞれ2試合に出る形になりやすいため、1番手・2番手の強さがそのままチームの得点力になります。

以前の日本は、張本選手に頼る場面が多く、2番手以降が中国の選手に勝つのは簡単ではありませんでした。現在は松島選手が世界3位、張本選手が世界4位とトップ5に2人が入っています。そのため、全日本選手権を2度制した世界13位の戸上隼輔選手を3番手に置けるほど、選手層が厚くなりました。

張本選手は「戸上君も勝っていけば、日本が3-0で中国に勝てる時代が来てもおかしくない」とも語っています。3番手の戸上選手の成長が、日本がさらに上を目指すうえでの鍵になるという見方です。

中国は日本をどう見た?

新浪体育の「日本のダブルエース体制が成熟した」

日本の優勝は、中国でも大きく報じられました。日刊スポーツによると、中国メディアの「新浪体育」は「この勝利は日本のダブルエースの体制が成熟したことを象徴している」と伝えています。

同メディアは、「中国チームは1966年以来、アジア大会男子団体で圧倒的な強さを誇ってきたが、張本と松島の台頭がその絶対的支配を打ち破った」とも評価しました。さらに、「メディアやファンの間では、日本男子チームが長期的に中国チームと対抗できる実力を身につけたという見方が広まっている」と続けています。中国側が日本を一時的な脅威ではなく、今後も続くライバルとして見始めていることがうかがえます。

中国側の事情:樊振東の国際大会離脱、馬龍の引退、2番手以降の伸び悩み

日本の躍進の一方で、中国は世代交代の時期を迎えています。日刊スポーツによると、2024年のパリ五輪で男子シングルスの金メダルを獲得した樊振東選手は、五輪後に国際大会から離れ、長く中国を支えてきた馬龍選手も現役を引退しました。現在は王楚欽選手がエースとしてチームを引っ張っていますが、2番手以降の選手の伸び悩みが課題と指摘されています。

アジア大会の決勝でも、この課題が表れました。中国は王楚欽選手、林詩棟選手、温瑞博選手の3人で臨みましたが、2試合に起用された若手の温瑞博選手が、張本選手と松島選手に2敗しています。日テレNEWS NNNによると、王選手は直近の国際大会をケガで欠場しており、万全の状態だったかどうかは分かりません。

中国メディアは、「若手選手の大舞台での経験不足が懸念されている」「今回の敗戦は、中国卓球界にとって油断ならないという警鐘となった」と受け止めています。日本にとっては、中国が過渡期にある今が、差を詰める好機ともいえます。

それでも中国は強い:五輪5連覇、世界選手権12連覇

今年5月の世界選手権は、決勝で日本が敗れていた

アジア大会の勝利は歴史的ですが、中国が依然として世界最強であることに変わりはありません。中国は五輪の男子団体で、2008年北京大会から5連覇中です。世界選手権の団体戦でも、2001年大阪大会から12連覇を続けています。

その12連覇目となったのが、2026年5月にロンドンで開かれた世界選手権の団体戦でした。日本は2016年のクアラルンプール大会以来10年ぶりに決勝で中国と対戦しましたが、0-3で敗れています。卓球レポートによると、第1試合で張本選手が梁靖崑選手に2ゲームを先取しながら逆転負けし、第2試合では松島選手が王楚欽選手に1-3で敗れました。第3試合で戸上選手が林詩棟選手に敗れ、中国の優勝が決まりました。

日本の岸川聖也監督は「本気で優勝を目指せるところまで来た」と話す一方、第1試合で2ゲームを先取しながら落としたことを悔やみました。松島選手は「もっともっと技術力を上げていきたい」と語っています。わずか4カ月あまり後のアジア大会で、日本はこの悔しさを晴らしたことになります。

張本の言う「3-0で中国に勝てる時代」は来るのか

アジア大会の優勝後、張本選手は「これまでは『いつ中国とやっても有利だ』と口で言うことしかできなかったが、証拠で示すことができた」と語りました。さらに、「50、60%とは言わないですけど、70、80%くらいなら勝てると思っていた」とも話し、中国に勝つことが特別なことではなくなりつつあるという手応えを口にしています。

ただし、今回の決勝も3-2の接戦でした。第1試合では松島選手が2ゲームを先取しながら王楚欽選手に逆転負けし、第3試合では戸上選手が林詩棟選手に敗れています。5月の世界選手権でも、2ゲームを先取しながらの逆転負けが流れを変えました。リードした試合を確実に勝ちきる力が、日本の次の課題といえます。

張本選手の言う「3-0で中国に勝てる時代」が来るかどうかは、松島選手と張本選手がさらに力を伸ばすことと、3番手の戸上選手らが中国の2番手、3番手に勝てるようになるかにかかっています。一方の中国も、若手の育成を急ぐとみられます。両国の力関係がどう変わっていくのかは、今後の国際大会で明らかになっていくでしょう。

ロス五輪へ:日本男子卓球は団体で初めて金を取れるか

日本男子卓球は、五輪の団体戦でまだ金メダルを獲得したことがありません。2016年のリオデジャネイロ五輪で銀メダル、2021年に開かれた東京五輪で銅メダルを獲得しましたが、2024年のパリ五輪では4位に終わり、メダルを逃しました。一方の中国は、団体戦が始まった2008年北京大会から一度も負けていません。

2028年のロサンゼルス五輪では、松島選手は21歳、張本選手は25歳になります。どちらも選手として最も力を発揮しやすい年代で大会を迎えることになり、日本にとっては団体金メダルを狙う大きなチャンスといえます。英語版ウィキペディアによると、松島選手はパリ五輪では男子団体のリザーブ(控え)選手でした。ロス五輪は、本大会の舞台に立つ初めての五輪になる可能性があります。

ロス五輪の卓球の代表選考方法や、団体戦の出場権を得る方法の詳細は、この記事の時点では確認できていません。それまでには、2027年の世界選手権などの大舞台も控えています。今回のアジア大会の金メダルを一度きりの快挙で終わらせず、五輪や世界選手権でも中国に勝ち続けられるかが問われます。

まとめ

松島輝空選手について、この記事のポイントを整理します。

  • 2007年4月29日生まれ、京都府出身の19歳。左シェーク攻撃型
  • 2025年1月の全日本選手権初優勝から急成長し、2026年は全日本2連覇、ワールドカップ準優勝。世界ランクは3位まで上昇
  • 張本智和選手との「ダブルエース」体制で、アジア大会の男子団体決勝で中国を破り、60年ぶりの金メダルに貢献
  • 中国は世代交代の時期にあるものの、五輪5連覇、世界選手権12連覇の強さは健在
  • 2028年ロス五輪では、日本男子卓球として初の団体金メダルが期待される

松島選手は、アジア大会の個人戦でも男子シングルスや男子ダブルス、混合ダブルスに出場しています(日程は「アジア大会の卓球 個人戦はいつ?張本・松島・戸上の日程と放送予定、60年前の金メダルの歴史も」をご覧ください)。

【追記:2026年9月27日】個人戦では、男子ダブルスで戸上隼輔選手と組み、銅メダルを獲得しました。準決勝で中国の林詩棟/黄友政組に1-4で敗れましたが、アジア大会の卓球は3位決定戦がないため、銅メダルとなります(デイリースポーツ、スポーツ報知)。このほか、男子シングルスは準々決勝で林詩棟選手に2-4で敗れ、張本美和選手と組んだ混合ダブルスは準々決勝で中国の王楚欽/孫穎莎組に0-3で敗れています(卓球王国、スポーツ報知)。男子ダブルスのもう1組、張本智和選手・篠塚大登選手組の決勝までの戦いは「張本兄妹のアジア大会、同じ日の明暗|美和は銅、兄・智和は篠塚大登と大逆転で男子ダブルス決勝へ」で紹介しています。

世界ランク3位の19歳が、張本選手とともにこれからどんな記録を打ち立てていくのか、ぜひ注目してみてください。

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参考・出典